『むすび』:言葉に丁寧に、言葉を丁寧に | 周防大島・塾と田舎暮らし

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木村学習塾通信『むすび』  山口周防大島の小さな学習塾の通信です
<教える-教わる>の関係から、一人ひとりが結び合った関係に。子どもも大人も。そんな願いを込めて『むすび』。

:木村学習塾通信『むすび』
2016.1.4(371号)

あけましておめでとうございます

お正月を迎えてひとつ年を取る「数え年」を少し前まではお年寄りから聞くことはありましたが、この頃はもうほとんど聞くことはありません。ちょっと気になってネットで数え年のことを調べて見ると、誤って理解していたことが分かりました。誕生して初めてのお正月で1歳かと思っていましたが、このとき2歳。序数として0スタートではなく誕生したときに1歳だとか。さらに、お正月はお正月でも旧暦のお正月。西暦2016年のお正月を迎えましたが旧暦では2月7日がお正月。もう少し先です。いずれにしても暖かく穏やかな2016年の始まりです。年初の清々しい空気に包まれて、年齢をひとつ重ねるような身の引き締まる思いでいます。が、4日が月曜日というカレンダーの巡り会わせで、正月気分もそこそこにあわただしく日常に戻らなければなりません。

今年もよろしくお願いいたします。
みなさんにとって良き年となりますように。


言葉に丁寧に、言葉を丁寧に

問い
「下の図の4つの点を結んでできる正方形はいくつあるでしょう。
・  ・  ・  
・  ・  ・  
・  ・  ・                        」
(実際の問題用紙では九つの点は等間隔にならんでいます)

先月、上のような算数クイズを島中小学校の3年生から6年生までの児童9人に放課後算数教室で解いてもらいました。読み進むとすぐに答えが書いてあるのですが、みなさんもちょっと考えてみてください。

教室では、すぐに「四つ!」という声。それから「いや、五つ!!」という答え。そうだそうだとまわりのみんな。でも「甘いなあ」と私が言うとしばらくして「六つだ!!」「正解です」。皆さんも六つ目を見つけられましたか。四つというのは並んでいる2点を結んだ小さい正方形の四つ、五つ目は外側の端にある4点を結んだ大きい、全体の正方形。そして六つめは外側の辺3点の真ん中を順に結んだ斜めの正方形です。

ところがみんなの様子を見ていると一人5年生の男の子が納得していない様子。そばにいた先生が事情を知っていました。「彼は大きい正方形を数えていいのかどうかずっと迷っているのです」と。この大きい正方形の辺は頂点以外に真ん中の点を通過しています。8つの点を結んでいるではないかということです。つまり問いの「4つの点を結んで」のところに矛盾するのではないかということなのです。
私は彼の言葉に丁寧な姿勢に大いに感心しました。問題の言葉をしっかり読み、そこから意味を考えようときちんとした姿勢。そこで彼にそう考えたことをみんなの前で話してもらいました。すると今度は6年生の女の子が「4つの点を頂点とし、ということじゃろ」と、問いの言葉が足らなかった部分を補ってくれました。言葉足らずの私の算数クイズの問いをめぐるこのやりとりに大いに考えさせられたのです。

人と人が何かを教え何かを習う、そのやりとりに言葉は重要です。伝えようとする人が使った言葉の理解が受け取る側も全く同じ理解をしているとは限りません。理解が違っていることはままありそうです。6年生の女の子のようにこちらの思いを汲んでくれるだろうという程度で発した言葉。多くの場合その程度でも理解してくれることはあるかもしれません。でも、人によっては違った理解になったり、全く意味をなさなかったりします。誠実ではない言葉です。

子どもたちが理解しているか、していないか。こちらの言葉不足や丁寧でない表現を慎まなければなりません。言葉を丁寧に発しなければいけません。

最後にひとまわり多い点ではどうでしょうか。問いの言葉は少し丁寧に書きました。

問い
「下の図の16ある点の中から4つを選び線分で結び正方形を作りなさい。異なる正方形は全部でいくつ出来ますか。
・  ・  ・  ・  
・  ・  ・  ・  
・  ・  ・  ・  
・  ・  ・  ・                      」
(実際の問題用紙では16の点は等間隔にならんでいます)