<ドルリイ・レーン悲劇四部作>とはミステリ作家エラリー・クイーンによる
『Xの悲劇』『Yの悲劇』『Zの悲劇』『ドルリイ・レーン最後の事件』
の4作です。(薬師丸ひろ子さん主演の『Wの悲劇』は対象外です笑)

特に『Yの悲劇』が氏の代表作とされてるなどの紹介本を読んで気になり、この6月に4部作を順に読んでみましたので感想を記します。
なお、私はミステリーマニアではなく(有名どころを拾い読み程度)、純粋に「本好き」の立場から書かせていただきます(ネタバレは無しで)

■『Xの悲劇』

・クリスティ『ナイルに死す』のようなミステリの王道という感じを受けました。

・志村けんさん主演の「60歳定年後に、探偵業に就く」というお話のNHKドラマを観て私は面白い設定だなあと思い、樋口有介『木野塚探偵事務所だ』の原作も読んだりしました。が、このドルリイ・レーン氏も同様に60歳でシェークスピア俳優を退いて警察に知恵を貸すことを楽しむというもので、「リタイア後の探偵」というのは昔からあった設定なのかと感心しました

■『Yの悲劇』

・これはだいぶ変化球のミステリだと思いました。犯人当ては難しく、これが最高傑作と言われるゆえんですね

・三島由紀夫氏はでも、本書を読んでミステリーが嫌いな理由を挙げられてます。曰く、探偵役がキザでイヤ。出しゃばり根性の余計なお節介(笑)。曰く、犯人以外の人物にいろいろ性格描写らしきものが施されながら、最後に犯人がわかってしまうと、彼らがいかにも不用な余計な人物であったという感じがするのがつまらない(笑)
 私も上記については同様な思いを感じました(特にレーンがもったいぶって、結論をなかなか言わないのはじれったい笑)。ただ、それら欠点があっても、それを大きく上回る意外な結末を楽しむことができたので、まあよいかなと思います

・オチがわかりづらいとのことで、知恵袋などで質問がされ、回答が載ってますが、本書を未読のかたはそれらは見ないほうがよいです。
(かつ中には、間違った回答をされてる方もいました・・)

■『Zの悲劇』

・『X』『Y』で活躍してきたサム警視は引退して探偵となり、一人娘のペイシェンスが若手ヒロインとして登場し、レーンとともに鋭く推理します。父娘で探偵業をするなんて面白い設定だなあと思いましたが、いまや普通にあるのでしょうか。

・お話としては「王道」だと思います。ペイシェンスに恋する青年も登場しますが、ひじ鉄を食わされるだけのために登場の感がちょっとかわいそう笑。

■『ドルリイ・レーン最後の事件』

・300年前に(今の我々の時代からだと400年前に)発行されたシェークスピア本に関する謎がテーマ。北村薫『円紫さんと私』シリーズで、後半はどんどん本の謎の話に進んでいき、私はついていくのがきついなとちょっと思いましたが・・このレーンシリーズも最後はやはり本の謎解き話になるのかあ、本好き作家はそういう傾向になるのかなあ、などと思いながら読み進めました

・何かに「4冊を通して読むと、ビックリするオチがある」と書かれてました。確かに、これも変化球のお話だと思います。


***

・総じて、4冊通してすべて面白かったです。お急ぎの方は『Z』は飛ばしてもそんなに違和感なく読めるように思います

・そしてやはりクイーンの最高傑作と言われる『Y』、ラストを飾る『最後の事件』のどちらも変化球のお話は、読んで損はないミステリの名作だと思います。

 

※整理すると以下です

 『Xの悲劇』:ミステリの王道

 『Yの悲劇』:かなりの変化球。名作

 『Zの悲劇』:ミステリの王道(本シリーズを読むうえでは省略も可?)

 『ドルリイ・レーン最後の事件』:かなりの変化球。名作

 

・最後に加えると、作者エラリー・クイーンはドルリイ・レーンという人物像に対し「正論より、正解を求める究極の探偵」というキャラ設定をしたことが、本シリーズの目指す最終テーマだった、という思いがしました