Esquisse autobiographique
par Maurice Ravel
自伝的素描
1875年3月7日、サン=ジャン=ド=リュズの町に近い、バス=ピレネー
コミューンの町、シブールで私は生まれた。
父はレマン湖畔の出身で、技師。母は、古いバスクの家系である。
生後3ヶ月の時、シブールを離れ、以後は専ら、パリで暮らしている。
幼少期、私はありとあらゆる音楽に敏感な少年であった。私の父は愛好家
の域を越えて音楽に博識であり、私の音楽的嗜好の伸ばし方や、熱意を刺激
する術を心得ていた。
6歳頃、音楽理論は一切学んだことがなく、そのイロハも身に付けていない
状態の中、私はピアノを習い始めた。私の最初の恩師はアンリ・ギス、そして
シャルル=ルネの両氏であり、和声法、対位法、作曲法の初めての手ほどきは、
シャルル=ルネ氏より受けた。
1889年、私はパリ音楽院にて、アンティオーム氏のピアノ予科のクラスへと
編入を許され、次いで2年後、シャルル・ド・ベリオ氏のクラスに入った。