現金に手を出すな
現金と書いて「げんなま」と読む。
テーマ曲は「グリスビーのブルース」です。
家にあったヨーロッパ映画音楽のレコードの中に入っていたので、子供の頃から曲もタイトルもしっかり覚えていました。
はい。マセガキの出来上がり!
手持ちの楽譜にも載っていたので、演奏の仕事を始めた当初からレパートリーに加えていて、週に1度くらいは弾いていたと思います。
夜のムードが漂う都会的な曲でピアノのBGM演奏にはピッタリ。
映画のイメージも勝手に膨らませていました。
実際に観てみたら…
まず、映像がモノクロでビックリ。
フレンチ・フィルム・ノワールなどという言葉すら知らなかったので、曲のイメージから色を想像していました。
次に、キーが違います。
きっと家のレコードも本家のサウンドではなかったのですね。
それにどの楽譜を見てもキーはDマイナーで書かれていたので、ずっとDマイナーで弾いていました。
始まってすぐにジャン・ギャバンがジュークボックスでこの曲をかけるシーンがありますが、キーがAマイナー(実際にはAマイナーより少し低い)だったので驚きました。
夜のムード漂う都会的…というより、いわゆるマイナーキーが持つ哀愁や暗さの方が濃くなります。
ジャン・ギャバン演じるマックスが「俺の好きな曲」と言っている曲。
マックスの役柄にはAマイナーの方が合っているかも。
キーが違うと本当にイメージが変わるので、曲に対する思い込みが一気に崩れました。
崩れて良かった。
ヴィクター・ラズロがアルバム「クラブ・デゼール」の中で歌っているバージョンはF♯マイナーです。
これを聴くと、もう曲自体がオシャレなのだと分かります。
いつも弾きながら途中の転調が気持ち悪いな~と思っていたのですが、それが逆に古さを感じさせなかったのかも知れません。
そして最後の驚きはタイトルの「グリスビー」。
てっきり人の名前とか固有名詞だと思っていました。
フランスの俗語でこの映画の中でいうと、まさに現金(げんなま)のこと。
この邦題を考え付いた人。
他の映画にもタイトルを付けてあげてほしかった…