小雨が傘に当たる。

僕は雨が好きだ。
傘なんてどっかに放り投げて、服だって全部脱ぎ捨て全身に浴びたい。
静かに誰もいない場所で。

きっと僕は誰よりも怖がりで周りを気にする寂しがり屋なんだろう。
じゃなかったら、そこまでしたいとは思わない。

僕は、いつも誰かに優しくしてきた。
そう、いつも。
それを喜んで受け止める人もいれば、迷惑だという人もいた。
前者の場合は安全圏。
まぁ、よしって感じ。
でも、後者の方が嬉しかった。
待ってました!って感じ。
自分でも何でなのかは分からなかった。
ただ、100回の「ありがとう」より、1回の「嫌だ」を言われたかった。
そんなはずじゃなかったのに、何でなんだろう。
そう、何で…。

僕にとっての優しさは単なる自分を美化して守るための保険に過ぎなかった。
誰かが憎まれても自分だけは安全でいられるように。
でも、それはとても孤独なこと。
僕は相手のことを知っているけど、相手は本当の自分を知らない。
もしかしたら、もうそれはみんなに知られていて、みんなは僕を騙しているのかもしれない。
だとしたら、それは最悪のパターンだ。
本当、最悪…。

ある時、僕は恋をした。
ほとんど一目惚れだった。
色白で綺麗な髪、小柄ながらもその存在感は僕にとって大きなものだった。
彼女の色っぽい唇から発せられる細くても芯のある声と、全てを忘れさせてくれる無邪気な笑顔に彩られた言葉が孤独だった僕の心を満たしてくれた。

彼女が言ってくれる「ありがとう」は、なぜか嬉しかった「嫌い」を100回言われるよりも、遥かに嬉しかった。
僕が彼女に向けた優しさは、自分を美化するものでも守るものでもなかった。
ただ純粋に彼女が好きで、彼女のためだったら自分のことは、どうでも良かった。

「あなたは、いつも私に優しくしてくれるわ。なぜ?」

「君のことが好きだからさ。」

「違うわ。それ以上に何か温かいものを感じるの。」

「それって?」

「愛…だと思う。」

僕は何も知らなかった。
その言葉の音は、よく耳にするけど、実際に出会ったことはなかった。
でも、僕は自分の優しさの別の意味を彼女を通してしれた。

僕は何も言えずに、ただ胸の鼓動が高鳴り、息苦しくなるのを感じた。

僕は、もう独りじゃない。