「くたばっちまえ!」
おもしろマジメの80年代が産んだフェミニン歌謡の傑作。
「くたばっちまえ!アーメン」
女性3人グループ・Sugarの「ウエディング・ベル」は、インパクトの強いラストの啖呵が反響を呼び、81年秋、オリコン2位の大ヒット。
この曲は、自分をふった恋人の結婚式に呼ばれた女の子の、複雑な胸中を歌ったコミカルソング。
教会のいちばん後ろの席で、元カレの幸せそうな姿を見せつけられた主人公は、新婦よりも「私の方がちょっときれいみたい」と内心毒づきながらも、未練タラタラ。本当は自分が上がっていたはずの祭壇に向かって「くたばっちまえ!」と啖呵を切る。
ボサノバ調のゆったりした曲調と、ラストの暴言のギャップがインパクト大。
3人のコーラスは美しく、コミカルな中にも、元カレを忘れられない乙女ゴゴロのいじらしさを感じさせる。
近年、結婚情報誌「ゼクシー」が行なった「元カレ・元カノを結婚式に呼ぶのはアリ?ナシ?」というアンケートでは、男女とも70%が「ナシ」と回答。
ちなみに、アリ派の理由は「お互い未練がないなら、過去は過去」「恋人から友達になったのなら呼んでもOK」「周りの友達だけ呼んで、元カノだけ呼ばないのは申し訳ない」というものだった。
「ウエディング・ベル」の元カレは、この30%のアリ派だったのだろう。
歌謡曲史的には、笠置シズ子以来久々の女性コミックソングのヒット、女の子バンドによる日本初のヒットソング…と様々な見方ができる。
が、やはり「くたばっちまえ!」という最強のディスりワードを女性が放ち、それが世の中に好意的に受け入れられたというフェミニズム的な価値が高い。「おもしろマジメ」が尊ばれた80年代初頭ならではのヒット曲だ。
Sugarはその後、ヒット曲が続かず、87年に解散。
90年に、「くたばっちまえ!」部分を歌っていたメンバーの毛利公子が死去。
歌い手不在の「結婚式で歌えないウエディング・ソング」でありながら、カラオケ人気は依然高く、不思議な生命力を持つ楽曲である。
「ウエディング・ベル」
作詞・作曲:古田喜昭
編曲:平野融