とっておきの春は、陽当たり良好!
あだち充初ドラマ主題歌は、九州男児が歌う青春情熱歌謡!
「『陽当たり良好!』の元ネタは、日活の『未亡人下宿』シリーズですね」
漫画家・あだち充は、代表作「陽当たり良好!」を振り返って、述べている。
「陽当たり良好!」は、1980年から「週刊少女コミック」で連載。
叔母の家に下宿する女子高生のヒロインかすみが、同居人の4人の男子と巻き起こすドタバタを描いたラブコメディ。あだちの出世作となった。
同作は、82年春に日テレで連続ドラマ化。ドラマでは、同居人の男子高校生・高杉勇作を竹本孝之が好演。
竹本は前年に歌手デビューし、同じ事務所の松田聖子とチョコレートのCMで共演。新人アイドルとして注目を集めており、あだち作品初映像化となる「陽当たり良好!」で人気を一気に高めた。
竹本は、主題歌の「とっておきの君」も歌唱。
「とっておきの春を連れてきたよ 君に」という哀愁味漂うメロディで始まるこの曲は、恋人への溢れる愛を描いた情熱的な青春歌謡。
作詞はシンガーソングライターの小椋佳だが、代表作「シクラメンのかほり」でのリリカルさはこの曲にはなく、「持って行きな僕の愛を全部!」という若い男子の恋人へのほとばしる情熱が、ストレートに描かれた歌詞になっている。
デビュー以来、「照れてZin Zin」「連想ゲーム」と、コミカルなアイドルポップを歌っていた竹本。だが、眉毛がキリッとした九州男児で、語尾をシャウト気味に歌唱する竹本には、トシちゃん風のライトなポップスよりも、初期・西城秀樹風の「青春情熱歌謡」の方が似合っていた。
竹本は、この曲で自己最高10万枚を売上げ、以後、「傷だらけONEWAY」「俺たちのストリート」…と、ロック風の作品に路線変更。
80年代初頭のソロ男性アイドル文化の多彩さを象徴する竹本は、その後、自作曲のシングルも発表。近年も、ギターを抱えてライブ活動を継続中。
90年代に同じ長崎出身でドラマでブレークした福山雅治の活躍を顧みると、10年早い存在だったのかもしれない。
「とっておきの君」
作詞:小椋佳
作曲:馬場孝幸
編曲:鷺巣詩郎