深キョンが軽快に歌った、渋谷系・アイドルPOP!
90年代の女優シンガーブームが生んだ、最良の実験作!
80年代のアイドルブームが終焉し、90年代はソロのアイドル歌手が激減。
92年デビューの安室奈美恵が新しいスタンダードとなり、若い女子も高い歌唱力・ダンススキルを求められ、可愛いだけではソロデビューできない時代に。女性アイドルはグループ売りが多くなっていった。
そんな中、90年代後半にブームだったのが「女優シンガー」だ。
94年、内田有紀が、筒美京平作「TENCAを取ろう! -内田の野望-」でデビュー。オリコン1位。
97年には、広末涼子が、竹内まりや作「Majiで恋する5秒前」でデビュー。こちらも1位。
前後して、中谷美紀が坂本龍一作「砂の果実」、ともさかりえが秋元康作「エスカレーション」、松たか子が人気脚本家・坂元裕二作詞の「明日、春がきたら」で、それぞれトップ10ヒットを飛ばしている。
彼女らは、テレビドラマでブレーク後、女優としての人気を背景に、有名作家からの提供楽曲でCDデビュー。ソロアイドル歌手不在の時代に、その代替的存在として人気を博した。
「永遠って言ってたって 何だって終わるでしょ」
深田恭子は、99年に「最後の果実」で歌手デビュー。
前々年、主演ドラマ「神様、もう少しだけ」で難病を抱えるヒロインを演じ、この人気を背負ってのデビューだった。
が、深田は、有名作家ではなく、新進作家たちに作品を委ねたのがユニークだった。
「最後の果実」は、SMAPの「SHAKE」で注目された小森田実の作曲。前年のaikoのデビュー曲「あした」のリメークで、aikoもコーラス参加している。
そして、出色の出来なのが、2曲目の「イージーライダー」。
この曲のプロデュースは、ロックバンド・PLAGUES(プレイグス)のリーダー・深沼元昭。
流麗なストリングスが奏でる軽快なイントロは、70年代のソウルミュージックを想起させ、クラビネットのフレーズも極めてファンクっぽい。深沼のR&Bへの教養の深さ全開の佳曲だ。
当時J-POPの歌詞で多用されていた「永遠」というワードを皮肉った歌詞も爽快!
深田のアタック感強いハイトーン・ボイスも好調。
この曲はオリコン6位を獲得。
が、以後、ヒットは続かず、2002年、深田はシングル7枚で歌手活動を終了している。
現在、深田のベスト盤は未発売。サブスクも未解禁。
だが、「イージーライダー」は、松原みき「真夜中のドア」のごとく、シティポップの側面からいつか再評価される気がしてならない。
イージーライダー
作詞:黒須チヒロ
作曲・編曲:深沼元昭