日本最古の「最後のドライヴ」SONG !?
フロントグラスに銀の雨!
「恋人との最後のドライブ」という場面(シチュエーション)は、歌謡曲・J-POPのもはや定番だ。
そして、日本最古の「最後のドライブSONG」は、おそらく1968年の弘田三枝子の「涙のドライヴ」ではないだろうか。
「フロントグラスに銀の雨/これが最後のドライブかしら」
彼との最後のデートの帰り道。
不意に降り始めた雨の中、車中に訪れる沈黙…。
この曲の歌詞からは、主人公の女性や相手の男性のキャラクター描写は一切行われず、ただただ車中を支配する「恋の終わりの静かなセンチメンタルなムード」だけが橋本淳の的確な描写で切り取られている。
気まずくなった相手とも、目的地までは車中で共に時間を過ごさなければならない。
目的地(私のお家)に着けば、それがそのまま恋の終わりとなる。
「最後のドライブ」というシチュエーションが、極めて歌謡曲的なドラマの宝庫である事に、日本で一番最初に気づき歌詞化した作詞家が、橋本淳だった。
当時、高度成長期の波によって、急速に庶民に普及始めたマイカーは、1960年代末期にマイカーブームを巻き起こす。歌謡曲の世界でも、1964年の「自動車ショー歌/小林旭」を皮切りに、車・ドライブをテーマにした楽曲がどんどん出始めたのがこの時期だ。
橋本淳は、この後、「真夏の出来事/平山三紀」(1971年)、「初恋のメロディ/小林麻美」(1972年)と、最後のドライブSONGで、ヒットを連発していく。作曲はもちろん、いずれも筒美京平!
この曲の出だしのフレーズは、その後、中島みゆきの「悪女」のモチーフとなり、「最後のドライブSONG」は、一連のユーミンSONGへと受け継がれて行く。
日本の2大女性シンガーソングライターにも影響を与えたエポックメイキングな失恋SONG。
ミコも、この曲ではいつものパンチ唱法を少し控え、抑制の効いたボーカルを聴かせてくれる。
「涙のドライヴ」
作詞:橋本淳
作曲・編曲:筒美京平
歌:弘田三枝子


