むかしむかしの素敵なピアノ展 記念コンサート@銀座ヤマハホール | めじの音楽日記

めじの音楽日記

クラシック音楽のコンサートの感想などを綴っています。

筆者はクラシック愛好歴40年、年間数十回はコンサートを聴いています。

30日(金)19時から銀座ヤマハホール聴いた、
むかしむかしの素敵なピアノ展。記念コンサートの模様です。

$めじの音楽日記

【出演】

小倉 貴久子(フォルテピアノ)
桐山 建志(ヴァイオリン)
花崎 薫(チェロ)
三宮 正満(オーボエ)
坂本 徹(クラリネット)
塚田 聡(ホルン)
岡本 正之(ファゴット)


【演奏】

A.ヴィヴァルディ/室内協奏曲より
【使用ピアノ】クリストーフォリ(1720年製モデルの復元楽器

L.M. ジュスティーニ/ソナタ 第4番 ホ短調《チェンバロ・ディ・ピアノ・エ・フォルテすなわち、いわゆる小さなハンマー付きチェンバロのためのソナタ集 作品1より》
【使用ピアノ】クリストーフォリ(1720年製モデルの復元楽器

J. ハイドン/イギリス・ソナタ ハ長調
【使用ピアノ】ブロードウッド(1802年頃製)

  **休憩**

W.A. モーツァルト/クラヴィーアとオーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴットのための五重奏曲変ホ長調 K.452
【使用ピアノ】ワルター(1795年製モデルの復元楽器)

F. メンデルスゾーン/クラヴィーアとヴァイオリン、チェロのための三重奏曲 第1番 ニ短調 作品49
【使用ピアノ】(伝)グラーフ(1820年頃製)



浜松市楽器博物館の全面的な協力で6台もの特別なフォルテピアノを東京銀座に一か月間設置して催されてきた、素晴らしいイベントのフィナーレを飾るコンサートでした。

ほぼ一か月間にわたって6台のピアノ達は銀座ヤマハの地下2階に設置され、毎日3回づつものミニコンサート(延べ87回も!!)が行なわれてきました。

このミニコンサートは、イベント全体を演奏家側から取りまとめられた小倉貴久子さんご自身をはじめ、羽賀美歩さん(つい先日、世界最高峰のフォルテピアノコンクールであるブルージュコンで3位入賞、ちなみに小倉貴久子さんは同コンクールのアンサンブル部門とフォルテピアノ部門で1位)、川口 成彦さんなどのお弟子さんが出演されました。

私もそのミニコンサートに4回も足を運ばせて頂き、身近にこれらのピアノの美しい音色と素晴らしい演奏、そしてためになり、とても分かりやすい解説に耳を傾けました。

ピアノの発明者、クリストーフォリ(ただしこれはレプリカ)から始まって、6台ものフォルテピアノを世界的なレベルの演奏者の方々で間近で聞かれるチャンスなど、世界的にもみても大変貴重な機会だったと思いますし、日を追うごとに聞きに来ている方々の数も増え、皆さんに新鮮な感動を与えていた様子を共有できたことは、私にとってもとても幸せな一か月間でした。

この晩の演奏会は、そんな特別なイベントのフィナーレを飾るに相応しい、素晴らしいプログラム、素晴らしい演奏家さんたちが勢ぞろいで、終演は21時半近くになるほどの長いプログラムでしたが、聴衆一同、聴き惚れたひと時だったと思います。


イギリス製のブロードウッドで弾かれたハイドンの上品で引き締まった表情、ウィーン製のワルターによる輝かしいモーツァルト、そして重厚さを備えるまでに発展しながらも透明感とのバランスのよいグラーフによるメンデルスゾーン・・・

どれもそれぞれの曲が作られた時代の楽器なのですが、作曲者が本来想定していたサウンドがこんなにも素晴らしいものであったのか、と再認識させられる演奏でした。

フォルテピアノは、20年ほど前までは、時代考証的な目的で使われるもの・・という感じの演奏家、プロデューサーが多く、気難しい音楽愛好家が渋い顔つきで聴くもの?というような時代があったのも事実だと思います。

しかし、こちらの小倉さんを初めとした最近のフォルテピアノ演奏家さん達は、この楽器を愉悦感と美しさに満ちた、とても楽しい音楽である事を再認識させてくれ、これらの楽器が「時代劇を見る」ような楽しさではなく、一つの重要な音楽ジャンルとしてもっともっと楽しまれるべきものであることを、広く知らしめてくれるものでした。

87回のミニイベント、そして今日の素晴らしい〆のコンサート、等々の大成功は、時代に残るイベントだったのではないでしょうか。

古楽愛好家のひとりとして、これ程の喜びはありませんし、微力ながら今後ともこの取り組を応援させて頂きたいです!

会場には、ぶらあぼだけでなく、素晴らしさと美しさのあまり、思わず多くの聴衆さんがため息を漏らしていたのが、強く印象に残りました。

ヨーロッパでコンサートを聞いていて、時々目にする光景ですが、日本では結構珍しいです。

末筆になりますが、素晴らしい管楽器の皆さん、弦楽器の皆さんにも、本当に感激しました。


では。