こんにちは。浄書家・森本良子です。
楽譜を作る際に心がけていることで、『初見演奏でも使いやすい』というのがあります。
初見演奏というのは、楽譜をパッと見て演奏することなのですが(実際は1、2分くらいは確認するのですが・・)、このとき演奏家の頭の中では膨大な情報処理が行われています!
拍子を確認する、調性を確認する(長調、短調も)、テンポを見る、曲の雰囲気を見る、途中に転調があるか、拍子やテンポの変更があるか、リズムは・・、フレーズは・・、伴奏は・・・
私が最も苦手とする(笑)初見演奏ではあるのですが、だからこそ、どうしたら楽譜を分かりやすくできるかを考えています。
その一つが、強弱記号の位置です。
通常、強弱記号は音符の下につけるのですが、国内海外さまざまな出版社の楽譜を見ると、少し右にずれていたり、左にずれていたりするものもあります。(隣の音符の下にならない程度)
特に理由はなく、少しスペースが足りなくてずれたとか、そんな程度のことなのですが、これは演奏する側から見ると、けっこう大きな違いだったりします。
音符の下にあるのは、その音からこの強弱記号ですよ、と分かる一般的な書き方です。
左にずれているものは、間違いでは決してなく、演奏する立場からすると分かりやすい表記の仕方だと思います。
楽譜は左から右に読みますから、音符より少し前に出ている記号は早く認識できます。
強弱記号の場合、音符より先に認識できることで、その先の情報処理を少し楽にできるのです。
実際、大きな音でジャーンと弾いてしまってから「あ、pだった」では困るわけで(笑)そうならないためにも、少しだけ記号が前に出ているというのは、間違いではないのです。
そこから考えると、強弱記号が右へずれているのは、止むを得ない場合は仕方ないのですが、とても不親切に見えます。
演奏者側への配慮をもって、楽譜をお作りしていきたいものです。