こんにちは。楽譜浄書家・森本良子です♪

 

引き続き楽譜の歴史を、簡単にまとめてみたいと思います。

 

今回は強弱記号、そして発想記号の歴史です。

 

 

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発想記号というのは、曲全体の雰囲気や長いフレーズに対して使われる記号のことです。

 

一つには強弱記号、もう一つは速度や雰囲気、そして表現を指示する記号です。

 

  • 強弱記号

フォルテ(フォルテ)、ピアノ(ピアノ )など、イタリア語のforte(強く), piano(弱く)をもとにした記号になっているのは、皆さんご存じでしょう。
 
そしてff、ppなどは、もとのf、pに-issimoをつけることで元の意味が強められ、楽譜では強弱記号として使われています。
 
現在まで使われているこれらの強弱記号、および松葉(ヘアピン)などの記号は、18世紀に定着しました。
 
これはベートーヴェンの時代、楽器の改良が重ねられ、より多様な音量の幅に対応できるようになったためです。
 
これを境に、強弱による表現の幅が大きく広がることとなりました。
 
*補足
18世紀の作品には、ppはpiù piano(ピウ ピアノ)の意味でつけられているものもあります。
 
この場合、ppは「より弱く」という意味であり、pp(さらに弱く)という記号とは異なるのです。
 
したがって、ffの後にあればむしろfと解釈する方が適切ということになり、一般的な知識だけでは計れないものもあります。
 
  • 速度表記

17世紀、今でいう速度記号は、速度というよりも曲の雰囲気を示す意味合いが強いもので、文字通り「発想記号」でした。
 
雰囲気の中に、速度の意味を含ませたものだったのです。
 
たとえば、Allegro。
 
現在では「はやく、快活に」の意味で使われていますが、もともとは「愉快な、陽気な、快活な」という意味のイタリア語です。
 
このイタリア語の意味から、この雰囲気をあらわすのに適した速度として「はやく」という意味合いにつながっていくのです。
 
このように18世紀まで、標語はあくまでも「発想記号」であり、その大半はイタリア語で示されていましたが、その後19世紀に入り、速度記号と発想記号は明確に区別されるようになります。
 
さらにその頃になると、作曲家はそれぞれの国の言葉で、発想記号を指示するようになりました。
 
これは、作曲家がより細かなニュアンスを伝えるために、自国の言葉を使う方が有利だったからと考えられます。
 
特筆すべきことは、速度記号と発想記号が区別されるようになったことによって、区別される以前の18世紀とその後の19世紀では、同じ発想記号でも意味合いが異なっている場合があることです。
 

さらに、速度表記にはメトロノーム記号も19世紀以降、多用されるようになりました。
 
これは19世紀前半に、メトロノームが発明されたことによって、速度をより明確に数値化するようになったためです。
 
♩=80とは、1分間に四分音符80拍の速さを表しています。
 
まれに見られるM.M.とは、メンツェルという人物がメトロノームの特許を取得したことに由来して、「メンツェルのメトロノーム」という意味で、現在まで使用されている表記です。
 
19世紀以前の作曲家の曲にも、メトロノーム記号が書かれているものがありますが、これは校訂者によって加筆されていると考えられるでしょう。
 
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*補足(浄書の中での扱い方)
速度記号には、曲の冒頭や場面の切り替わりで、それ以降の一定の速度を示す速度標語と、速度の移行や変更を示す速度表示があります。
 
速度標語は、頭文字に大文字を使い、太字で示されます。
 
イタリア語、ドイツ語、フランス語、英語のどれも同様に、AllegroSchnellVivoFastのように使います。
 
メトロノーム記号についても、表記には太字が使われます。
 
速度表示は、主に小文字の斜体で示されます。
 
ritardando(rit.)、rallentando(rall.)、accelerando(accel.) のように表記されます。
 
そして略語で書かれる場合、かならず省略をあらわすピリオドを付けることを忘れずに。
 
一般の英語と同じですね。