こんにちは。楽譜浄書家・森本良子です。

 

今日は浄書の歴史のお話し。

 

かつてヨーロッパでは、楽譜印刷は彫版印刷と呼ばれていました。

 

彫刻のようにして楽譜を銅板に専用の彫刻刀で削り、版画のようにインクをつけて刷っていたのです。

 

その作業は非常に地道かつプロフェッショナルで、誰にでもできる仕事ではありませんでした。

 

そして今でも一部の老舗の楽譜出版社は、この銅板を保存・管理し、現在も使用しているといいます。

 

 

この彫版楽譜制作の、貴重な映像資料があります。

 

楽譜印刷の歴史(Music Engraving: an Art and a Craft)

 

資料はヘンレ社のものですが、まず最初に楽譜中の五線や音符同士の幅などを測り、薄い金属板に写して鉛筆で下書きをしています。

 

その後、五線を彫り、音符(符頭)を型押し、棒(符幹という)を削って、タイを型押し、さらにスラーを彫っているところなども収められています。

 

よく見ると、これらは全て反転させて彫られています。

 

そして、金属板を裏から叩いて彫り間違ったらしきところを、元に戻している様子も伺えます。

 

金属板はその後、インクをつけ、彫ったところは白く、それ以外は黒く刷り上げられます。

 

そして映像にはありませんが、この白黒を反転してさらに印刷にかけられ、楽譜としてまとめられていきます。

 

 

現在、ヨーロッパでも浄書はかなりデジタルで作られたものが増えてきました。

 

しかし、こうした古くからの職人の手仕事の歴史とそのエッセンスを引き継いで、成り立ってきています。

 

This is an absolute artisan - a valuable and memorable movie of the art of music engraving. Hope this craftsmanship would be handed over for the future musicians.