全国民対象!NHK紅白歌合戦世論調査結果開示・総評

 

 このブログ記事やX(旧Twitter)では「NHK紅白歌合戦」について論じてきた。1月の個人的総評から4月、6月の出場歌手・曲目予想とどれも毎月の閲覧回数のトップに上り、検索エンジンからの閲覧も多い。それほどにまで多くの人々が注目をするものが毎年行われていることは言うまでもない。

 しかし、まだ完結していないブログ記事がある。それが「紅白世論調査」だ。2月から調査を始めて5ヶ月を超える期間にわたり行い、151件の回答が寄せられた。調査へのご協力誠に感謝いたします。

 今回はこの調査の結果とそれに対応した総評・深堀を行う。

↓↓昨年紅白 個人的総評↓↓

↓↓紅白出場歌手・曲目予想 第一弾(4月)↓↓

↓↓紅白出場歌手・曲目予想 第二弾(6月)↓↓

 

調査結果開示に先立って 

 調査の方法や内容・動機については、ご不便をおかけするが過去のブログ記事より確認を願いたい。下のURLより確認できる。

↓↓調査方法・内容等↓↓

 下の「調査結果」では筆者の主張は含まず、調査によって寄せられた事柄・意見を全て内容を変えずに開示する。尚、調査は個人を全く特定しない形で行っているが、意見(文章)に関しては回答順ではなくランダムで記載している。予めご了承いただきたい。また、「出場歌手予想調査」は読んで字のごとく出場歌手・曲目予想に利用されているため、今回は開示しない。9月の第3弾に開示する。「出場歌手・曲目予想調査」単体はまだ行っているため、回答ができる。

↓↓出場歌手予想調査↓↓

 この調査では年齢・性別を含めないで行った。そのため、それらから発生する固定概念をあまり感じることなく結果を見れるだろう。

-お断り-

 この調査結果の情報の無断利用や無断転載を禁止する。尚、問い合わせがあっても個人利用は許可しない。そのため、この情報の拡散・紹介したい際は、このブログ記事のURLで行うよう、ご配慮をお願いしたい。

 

  調査結果

総評を前に

 近年は、コロナ禍も重なり、SNSやインターネットの利用が急増した。コロナ禍以前の調査でさえ、1日にインターネットへ書き込まれる言語の内、約7割が日本語だと判明したため、今はより増加しているかもしれない。このブログ・X(旧Twitter)・Instagramを含めて、言いたいことが日本人には多いようだ。

 SNSやインターネットでの書き込みは勿論、対人ではない。書き手の目の前には画面があるがけだ。そのため、自分が思っていることをストレートに書きやすくなり、それを読んで、その意見への反論・賛同などが出来るようになった。「炎上」というのはそれが快感に思える人々が多くなったことに通じるだろう。そのため、多くの人が共感を得やすいものが攻撃対象になる。

 だからこそ、「NHK紅白歌合戦」が対象となり「#紅白見ない」なのだ。つまり、紅白(この調査・話題)は現代社会を映し出すものとなったと言えるだろう。しかし、それは不幸にもその人のリアルな考えが映し出されているとも言える。昨年の紅白ではその傾向が高く、一定の評価があるとより攻撃的になるようなものも一部見られた。

 言えることは、それほど紅白が多くの人に影響を与え、興味があることでもあると言うことだ。また、楽しみにしていたり、期待していたりするから多くの意見が出るのだろう。だからこそ、一つの発言で終わるのではなく、色々な考えを巡らせることが必要なのだ。

 

  調査の総評

 今回の調査で見られた意見について多くの人が寄せた意見や注目すべき意見などを細かく考えていくことにする。しかし、この調査・記事は全てインターネットを使用できなければ調査を回答することも、結果を読むこともできない。即ち「ネットが全て」とは思わないでほしい。これを頭に入れて、内容を細かく見ていこう。

※以降、全文敬称省略

 

①男女に関する違和感

 SDGsが流行し始めた頃から紅・白を男女で分けるやり方に異を唱える人が多くなった。今日、社会で求められているものは「ジェンダー平等」社会的性別の平等についてだ。身体的・生物学的な性別は「セックス」とされている。この2つの分け方をどう交わらせて考えるのかによって音楽の立ち位置が変わる。「歌唱」や「ダンス」と言ったものは身体的な表現であり、歌詞や催しは社会的な事柄と言う側面もある。さらに、「音楽」と言うものは文化であり、社会生活でのストレスを解消させるものでもあることから、根本的にこれらから切り離されたものとも考えられる(だからと言ってコンプライアンスなどを遵守しないことを容認しているわけではない。一般常識で考えた上での切り離しのこと。)。

 紅白は、こうした社会的性と生物学的性が密接に関係しており、それをNHKが行っているから議論になるのだろう。しかし、現在の音楽番組で男女が平等に同じ数出演しているのは紅白歌合戦だけだ。例えクジで紅・白決めたとしても、男女比の議論は必ず出る。また、そうでない人をどうするかなど、色々と考えが尽きないことである。今回の調査では「都道府県で分ける」や「東日本・西日本で分ける」という素晴らしい考えもお寄せ頂いた。この方法もよいように思えるが、各都道府県1組とすれば47人では不平等であり、グループ・バンドはどの人の都道府県を挙げるかと言う問題も発生する。筆者は、紅・白は以前のように分けるものの、男女でコラボした歌手を出場させることで公平性が担保できるのではないかと考えている。毎年このようなコラボはあり、話題性もあるからだ。しかし、これにも反論が多くあるだろう。

 「歌合戦」として戦わせているが、その要素も以前よりは薄れており、こんなにも平和な愛の詰まった争いは世界中どこを探してもないだろう。また、名前だけ残して番組内容を変化させるのも、なんだか寂しいように感じる。結局、どの選択をしたとしても批判は避けられないことだろう。

 これについて、紅白スタッフ側も「この紅・白の分け方が誰もが納得できた分け方であったとき革命が起こる」と言っている。決定打が出ることは難しいうえ、「こうれすればいい」とも言いがたいのがこの話題。「難しいもの、そういうものだ」と私たちが思っておくことが大切になるかもしれない。

 

②多様性がある紅白、ない人々

 近年は「多様性の時代だから」と言う文言を多く聞く。紅白でもこの文言に続いて、「男女に区切るのはやめよう」、「幅広い層が楽しめる番組へ」などの意見を述べる人も多い。これは今回の調査でも、直近のNHKへの意見でも見られる。一方で、「若者はいらない」や「K-popはダメ」、「知っている曲がない」などの意見も多くみられる。今回の調査では「日本で活躍していない外国人不要」や「日本語で理解できる曲名」などの意見も見られた。意見を見ても多様だが、内容に多様性が見られないものも多くある。

 調査では「昔の紅白に戻って欲しい」という意見があった。そのため、「昔の紅白」と比較して多様性と言うものを見ていくことにする。比較対象は昨年、第73回とその大体半分の第37回だ。第37回について少し説明すると、白組司会の加山雄三がトップバッターの少年隊「仮面舞踏会」を「仮面ライダー」と言い間違えたことで知られ、石川さゆりが自身初の紅組トリを務めた年だ。

↓↓紅白歌合戦ヒストリー 第37回↓↓

 上の表は出場歌手の簡単な分類を行っている。分類をするうえで一部不適切な表現がある。最初にお詫び致します。また、パーセンテージは出場歌手全体からの割合で示されており、四捨五入の関係で100%にならない部分もある。

 内容を見ると、紅・白の比率は変わりなく、特別枠が73回には7組ある(8組だが、1組はディズニーメドレー)。まず、初出場の割合は73回が約4%増加した。この次に年齢別の表を示すが、初出場の若年化が起こっている。

 次に、曲名の英語だ。今回は「英語のみ」と「一部が英語」を分けて集計をした。「英語のみ」の曲名の増え方は顕著だが、「一部が英語」の曲名はそれに比べれば差がない。また、37回は曲名に英語がある歌手は出場回数が少なく、年齢も若年層が多い。一方、73回は出場回を数問わず、そして年齢問わず入っていること。これは37回当時の若手が現在ではベテランの域に達していることが要因の一つかもしれない。そして、歌手自身が楽曲制作を行っていることは顕著になっている。37回が1割だったのもが73回では約4割に達している。だからこそ、個人の楽曲性から多様な音楽が響く番組になったと言えるだろう。

 73回で叫ばれたことは「K-pop、日本人でない歌手」の存在だ。これを比較すると驚くべき結果が得られた。それは73回では外人だけの出場歌手がいないと言うことだ。括り上「K-pop」とされていても日本人だけやグループの中に日本人がいることがあり、そのような結果となったのだろう。これを併せたとしても、全体からの割合はそれほど大きくない。また、紅白には37回のように、これまでも多くの外国人歌手の出演や共演を行ってきている。それに加えて、現在は多くのジャンルが共存している音楽番組が少なくなったことも原因の一つだろう。さらに、昨年の紅白に出場した外国人を含む歌手は、日本でも高セールスを記録した。

 一方で「K-pop」と聞いて日韓問題を話題に挙げて批判している人がSNSにはいるが、それは場違いのようにも思える。調査でもあったように、日本人で「K-pop」を頑張っている(その年実績を上げた)グループを応援していくことも大切だろう。

 最後に、「事務所への忖度」だ。今回は「ジャニーズ事務所」で比較している。昨今の事態を鑑み、事務所側を擁護するつもりは全くなく、今年出場できるかも分からない。比較してみると、割合的にはほとんど変わりがないことが分かった。この比較で最も差が少ないことがわかる。これにはジャニーズ事務所以外のグループが出場したことや週刊誌がこれを題材とした記事を書いていたことが要因の一つだろう。

 しかし過去には、最大で7組がジャニーズ事務所であったこともある。このように、長きにわたり愛されている歌手を輩出しているのだから、事務所としてやるべきことがあるようにも感じる。それによって、同業者や関係ない人々を巻き込んでいることは到底許されないことだ。脱線してしまったので、この問題に関しては以前のブログ記事を参照して欲しい。

 以前にも書いたが、事務所括りで議論するのは意味がないように思える。歌っているジャンルがそれぞれ違い、セールスの高さ、人気度が多くあるから出場しているように思える。演歌・歌謡曲が減少していることをそこで批判することはあまり良くないだろう。事実、演歌・歌謡曲がオリコン総合ランキングに名を連ねていることは、年に数回程度(今年(1/2~7/23)合算週間シングル:1回、合算週間アルバム:1回(どちらも10位まで))であり、世間での評価でいえば乏しいところが悲しくもある。だからこそ、多様性と言うのなら(事務所含め)ジャンル分けなど必要ないと思うのである。なぜなら、演歌歌手がJ-popを歌っても、ポップス歌手が演歌をカバーしても良いわけであり、そのようなことを行っている(又は、リスペクトがある)歌手が出場していると言えるだろう。

 次に、上に示している表は出場歌手の年齢を比較している。最初に断わっておくが、この括りが多様性のないことである。なぜなら、10代が加山雄三のことが好きかもしれないし、70代が幾田りらのことが好きかもしれない。だからこそ、人選は大変苦難することなのかもしれない。近年、「懐メロ」が増えているのはそのためだろう。そのようなことを頭に入れて比較を見ていこう。

 まず、10代・20代の若年層の出場者だ。これは37回も73回もほとんど変わらないと言うことだ。それに比べて、30代の出場歌手が激減した。これは、10~30代が聴いている曲が同一化している側面があるということだと思われる。それを裏付ける歌手は、あいみょんやKing Gnuなどである。あいみょんは50代のファンも多く、今年は連続テレビ小説「らんまん」の主題歌を担当していることがその証拠だろう。

 一方で、40代以上の歌手、特に60代以上の歌手が急増している。これは、視聴者の年齢が高年齢化していることを反映していることが伺える。しかし、それが必ずしも高年齢層からの評価が高いわけではないだろう。松任谷由実や福山雅治らは多くの年齢層から支持されている。即ち、年齢問わず、多様なジャンルを歌う歌手が増えたことで、高年齢層からの不満が消えないのだろう。

 このように色々な分け方で紅白を見ることができるが、結局は、事務所やジャンルに囚われず、その年多くの側面で活躍した歌手や注目された歌手、テレビなどで実績を上げた歌手などが出場できれば良いのだ。そのために、選考理由を公表したり、「NHKへの貢献度」や「セールスの高さ」を選考から外したりすることが必要なのかもしれない。そこで、事務所やジャンルに偏りがあるのはしょうがないだろう。なぜなら「NHK紅白歌合戦」は演歌歌合戦でもJ-pop歌合戦でもなく流行歌、現在はテーマにあったが楽曲の歌唱がされている。そもそも「歌謡曲」とは日本に伝わる様々な音楽と欧米の音楽の混合から生まれた流行歌の総称(広辞苑)であり、ジャンルを言っているわけではない。だから今も「FNS歌謡祭」(フジテレビ系)なのだ。

 ここまで、「多様性」と言うことを中心に見てきたが、紅白はもともと多様であり、多様性と言い始めたからこそ、多様性が無くなったように感じる。

 これに関して言及するのであれば、「特別企画」だろう。追悼や、「おかあさんといっしょ」(Eテレ)等の番組連携以外は「特別企画」にしない方が良いだろう。何より「NHK紅白歌合戦」は特別な番組である。そのため、出場者は全て「特別」なのだと感じる。

 

③曲尺は不平等?

 今回の調査では「演歌・歌謡曲の歌唱時間が少ない」との意見が多く見られた。簡単に考えれば、フルコーラスで行うことや持ち時間を統一することなどが挙げられる。しかし、多くの人々が注目する番組であり、できるだけ出場歌手を増やし、その歌手にあった演出をするためのセット転換の時間を鑑みれば難しい点も多い。では「なぜ歌唱時間が異なるのか」と言う疑問を6月に公開した「第74回NHK紅白歌合戦 出場歌手・曲目予想」で選出した歌手の新曲で比較を行う。

 これも多様性のない分け方で比較しているが、一目瞭然である。演歌・歌謡曲とJ-popではJ-popの方が曲尺が短いということだ。

 演歌・歌謡曲はイントロ・間奏全てにおいてとてもよく作られている。一方、J-popはイントロ・間奏は少ないものの、長文の歌詞を上手にはめ込み、カウンターで鳴るキャッチーなメロディーは称賛に値するものばかりだ。

 では何故、J-popはイントロや間奏が少なくなるのか。これは、今も昔も変わらず多くの媒介で歌声を聴いてもらうための作戦だからだ。現在はTikTokの影響もあり「15秒・60秒・3分」のバズり(人気・流行)が必要となっている。また、ダンス動画では原曲を2倍速や4倍速に早めて使用されている。楽曲への冒涜とも思えるが、これで楽曲が多くの人に知れ渡るのなら良い気もしてくる。しかし、これもTikTokをやっていなかったり、ダンス動画に興味がなかったりしたら耳に入らない。さらに、曲は知っていても歌手や曲名を知らないで利用していることもあるだろう。

 このような楽曲性の違いがある中で、同じ時間にしてもJ-popは「歌唱時間(単純に歌っている時間)」が長くなってしまう。しかし、演歌・歌謡曲は創り込み過ぎているが故にイントロ・間奏を安易に切れないこともある。このようなことで、1.5コーラスでも違いが生まれてくるのだろう。当然、演歌・歌謡曲だけでなく多くの歌手でフルコーラスで歌われていない。紅白での歌唱を「各歌手の有終の美」とするのであれば、なるべく歌唱が長く、曲を壊さない最高のアレンジで、うたコン(NHK総合)のように生演奏で演出にも力を入れて全歌手・楽曲の魅力を最大限発揮させることが重要ではないだろうか。

 「小さな紅白」とも言われる「うたコン」で7月各回の放送で歌唱した楽曲の平均曲数は10.25曲だ。45分で約10曲、再アレンジでどの歌手も平等に歌唱できている。これを4時間15分に置き換えれば、約56曲となる。昨年の紅白は(1組、1企画=1曲と置き換えて)52曲だ。多少の差はしょうがないが、十分に歌唱時間を確保できるのではないだろうか。

 しかし、演出のためにNHKホールではなく別スタジオでの収録はやめてほしいところだ。「お客様は神様だ」と言うように、お客様を入れて毎年NHKホールで行う番組が「NHK紅白歌合戦」だ。そこを揺るがすことがないように放送して頂きたいものだ。

 

④新時代の司会者へ

 この調査では司会者についての意見も多くあった。紅白の司会はCMもなくリハーサルも4日前からと、短期間に多くのことを覚え、本番に臨んでいる。そして、50組を超える歌手の歌唱を滞りなく進めていく。司会について見ていくと、昨年は「新たな試み」と言ってよいだろう。

 2010年代の司会者は、紅組が連続テレビ小説や大河ドラマに出演した俳優、白組がジャニーズグループが行ってきていた。これが変化し始めたのが2020年代に入ってからだ。その要因として71回から司会を務めている大泉洋の存在が大きいだろう。自由さもありながら、しっかりとまとめ上げることができている。また、多くの世代から支持しされている俳優だからこそ3年連続で紅白を支えられたのだろう。昨年は、そこに橋本環奈が加わり話題を呼んだ。なぜなら、NHKへの貢献度が少なく意外性があったからだ。しかし、その司会ぶりでより紅白を盛り上げ、堂々とした司会で多くの人々を驚かせた。今年もそのよな人が司会になるか、大泉洋のようにNHKの音楽番組の司会が行うこともあるだろう。

 司会に関しても忖度や不満の中に入る部分だろう。紅・白をハッキリさせないことや昨年はスペシャルナビゲーターなど迷走している部分もある。だが、司会者の紅・白はもうなくても良いことが昨年の紅白で感じられた。それは、紅白の垣根を越えて出場歌手を支えていたことだ。郷ひろみの歌唱に橋本環奈が加わったり、石川さゆりの歌唱後に大泉洋がお得意の「ブラボー」で称えたり(本人公認)と「司会」と言っても盛り上げ役にもなると言う新たな道が近年は拓かれた。

 問題は「スペシャルナビゲーター」の位置づけだ。昨年の司会進行がうますぎたため(今後もそのようになると仮定して)、総合司会に戻す必要性はないだろう。昨年はこの担当が初めてだったため、不安定だったが今年は必要になるだろう。なぜなら、テレビ放送70年だからだ。紅白ではこれに関わる企画もあるだろう。その企画のためにはテレビで長きにわたり活躍している人がナビゲートした方が説得力が増すだろう。このような企画をナビゲートすることや、司会とは違う目線で各歌手の注目ポイントを紹介することを行う存在は必要だろう。

 

⑤「けん玉」はあり?なし?そして芸人...

 現代のデジタル社会を生きる子供たちは、日本の文化や遊びを知らず大人になることも多くない。「ジェネレーションギャップ」を題材にしたテレビ番組もヒットするようになってきた。では聞こう。これを読んでいるあなたの周りには「けん玉」「コマ回し」「あやとり」「面子」等ができる子供はいるだろうか。

 「けん玉」は紅白であれだけやっているため「紅白で見た」になるかもしれない。ただ、これが大切だと感じる。紅白は70年を超える歴史があり、言ってみれば「伝統芸能」的な側面も大いにある。そのため、このような文化を後世に残すことも必要であるように感じる。それがギネスだからよくわからなくなっているのだ。しかし、中心に立っている歌手三山ひろしはけん玉に関しては検定もできる。素人が面白がってやっているのではない。そして、明日には元日(正月)となるのであればそのような文化的側面を入れても良いようにも思える。

 また、現代紅白は日本のエンターテイメントの結集であるようになってきた。昨年の紅白宣伝動画でも「ライブエンターテイメント」と表現している。エンターテイメントとは娯楽・演芸と言う意味もある。そのため、セット転換の間や出囃子に芸人が出てきても良いのだ。

 以前には氷川きよしの応援に志村けんとビートたけしが出演した。昨年も同じようにJO1の応援にロバート秋山竜次が出演した(両者、歌手と関わりがある芸人だ)。このように歌手、芸人、ドラマ、アニメなどが(勿論、歌手・歌に重きを置いて)共存することがテレビを表現しており、多様なものが楽しめるようになるのではないだろうか。

 そういう意味では、ディズニーやアニメとのコラボ企画が適している。今年でいえば、同局の番組「Venue101」のMCが歌う「ビートDEトーヒ」がそれを体現しているだろう。

 

⑥紅白は命がけ

 この調査では本当に多種多様なご意見をお寄せ頂いた。意見がすべて開示されるかが定かでなかったため、多くの意見が来ているのかも知れないが、読み手の気持ちにもなってもらいたいものだ。

 調査では「実力」についての意見があったが、初出場や若年層に支持されている歌手は人気があり、一定の実力がある。しかし、何十年もこの世界で活躍している歌手との差は大きいだろう。しかし、何かのキッカケで実力がつくことも往々にしてある。紅白はそのような舞台でもあるように感じる。

 また「歌唱力」に関する意見もあるが、多様な歌手が出場しており「歌唱力」と一言で言っても歌い手によって違う。また、聴き手の感性も別々だ。だからこそ、これも決まりがつかない。

 「NHK紅白歌合戦」は他の音楽番組とは特異的であり、歌手にとっては特別であり、夢の舞台だ。だからこそ、緊張のため歌唱で本領が発揮できないことがあるだろう。多くの歌手が出場できず、「若者より」とも言われ、不評の中の紅白だった。出場側の気持ちを我々が読み取ることができていただろうか。現在は、失敗があれば歌手もスタッフもリアルタイムでSNSなどに色々書かれてしまう時代になってしまった。

 さらに「学芸会レベルのモノは排除して良質な番組」との意見も来たが、いい加減にしてほしい。それぞれ全力を出して楽曲と向き合っている。これは演歌歌手でもJ-pop歌手でもK-pop歌手でも同じだ。また、スタッフ側も必死になって一つの番組を創りあげている。以前と比べれば、曲のテンポを速めることや衣装合戦も無くなった。福山雅治はラジオ番組で「紅白だからこそ現場は一致団結する。出演者・スタッフお互いがお互いを称える一体感がある」(2021年1月2日OA)と話している。さらに、美空ひばりは「音楽や文化には高い・低いはない」と話している。つまりレベルは関係ない。

 一人ひとり感性も捉え方も違うからこそ難しい側面もあることから「学芸会」と思う人もいるのかもしれない。しかし、学芸会であっても舞台に立つ側は全力になっていることに変わりはないだろう。

 意見の中には「お祭りのようなものが紅白」や「年の終わりは歌と笑い」と言うようものもあった。多少は大胆に、お粗末になっても、年の終わりは盛大に盛り上がることができる日本最高峰の豪華な学芸会を開こうじゃないか。

 

⑦若者はテレビを見ない?紅白は高齢者離れ?

 ここまでは、紅白の中身を中心に見てきたが、今回の調査では「若者のテレビ離れ」や「紅白の高齢者離れへ」などの言及があった。この側面に関しても考えていこう。

 まずもって、今日は年齢を問わずテレビ離れが顕著になってきた。テレビを設置していない家庭も多くなってきた。一方で、1世帯のテレビの設置台数も多くなった。これらが、視聴率が低迷している要因かもしれない。また、某量販店では「NHKが映らないテレビ」と言うキャッチフレーズでチューナーレステレビ(テレビ線がなく、インターネット配信を見るだけのテレビ)を売り出し話題となった。先日は「5世帯に1世帯が受信料が支払われていない」と言うようなことが話題となった。しかし、上で述べたようにそもそもテレビを置かない世帯も増え、テレビはテレビでもチューナーレスであれば(ワンセグなどがなければ)受信料を支払わなくても良いのだ。

 この調査で、「若者は受信料を未払いしている」や「きちんと受信料を納めているのは高齢者」との意見もあるが、未払いが発生していることは事実であるが、18歳で社会人として一人暮らししている人や大学を卒業して社会人として暮らしている若年層は(テレビがあれば)しっかりと支払っている人の方が多いのではないか。また、若年層だけが未払いしているわけでもないだろう。

 NHKでは「18祭」と言う番組を毎年放送し、歌手と1000人の18歳(正しくは17~20歳)との共演を行っており若年層から一定の評価を挙げている。また、「若年層から受信料を支払ってもらうために、紅白が必要だ」と言う意見はこれまでにもある。その意味では、昨年の紅白は成功と言えるのではないのだろうか。そもそも、人口割合的に少ない若年層が、テレビを視聴する時間が少しでも減るだけで、全体から見れば「大きく減った」となり、「若者のテレビ離れ」となっている側面も少なからずあるだろう。

 一概に言えることではないが若年層も人並にテレビを見ているだろう。SNSが若年層の居場所だと考えるとしたら、そこでテレビの内容が話題に上がっているのなら視聴していることになる。その最たる例として、⑤でも述べた「ビートDEトーヒ」だ。TikTokが公表した「TikTok上半期トレンド2023」ノミネート23選の「チャレンジ部門」にこの曲がノミネートされた。この歌やダンスは音楽番組「Venue101」(NHK総合)がなければ生まれてなく、そこで出演者との披露や、NHKMUSICのYouTubeで番組宣伝を兼ねての動画公開、他局でのこれに関する話題などテレビ発信のものがSNSで話題になっていることは間違いないだろう。

 さらに、調査では「若者はフェスに出ていてテレビは見ていない」と意見もあったが、紅白が「若者より」なら単純に、若年層はフェスではなく紅白を視聴する。年越しライブやフェスもキャパシティーは決まっており、人口割合的に少ない若年層も全員が行っているわけではない。どの年齢層を言っているがはわからないが、成人でなければ年越しライブ・フェスに参加できないこともある。寧ろ、高年齢層もライブに行っている可能性も大いにある。桑田佳祐は紅白当日、年越しライブを行っていた。また、今日はテレビの録画機能やNHKオンデマンド、NHKプラスなど多くの媒介で放送後も視聴できる。このような媒介で、放送後に話題になってから視聴することもできるようになった。昨年の紅白がその例だろう。「若者はフェスだ」と言うのは決めつけと言っても良いかもしれない。

 「高齢者の紅白離れ」と言う意見もあるが、テレビ東京での音楽番組は関東地域でしか視聴できない。そういう意味では紅白は全盛期より減ったかもしれないが、高齢者離れは少ないように思える。②で述べたことも関係してくるが、人口の多くを占める層が視聴しなければ、視聴率はもっと減っても良いだろう。

 しかし、視聴率もさることながら、視聴した人々に感動や興奮を与える「内容」が最も重要だろう。

 

⑧演歌・歌謡曲の衰退の責任は民放?

 この調査で「高齢者は今や激減している歌番組を楽しみにしている」との意見をもらった。ほぼ毎週に放送している地上波の音楽番組はNHKでは「うたコン」や「SONGS」の時間帯の番組、「Venue101」のみで、民放では「CDTVライブ!ライブ!」(TBS系)や「ミュージックステーション」(テレビ朝日系)などがあるが、毎週としつつも不定期で放送されている側面がある。以前より減ったが、音楽番組は存在している。

 では、出演者はどうだろうか。「うたコン」はジャンル問わず多くの歌手が出演している。「SONGS」も幅広い世代の歌手に焦点を当てて放送している。今回挙げたその他の音楽番組は若年層よりの内容だ。NHKは「Venue101」を放送しても他の音楽番組でそれをカバーできる。しかし、民放はそうではない。

 次に、衛星放送の1週間の番組表を見てみよう。毎日と言ってよい程、演歌・歌謡曲の番組を放送している。しかし、衛星放送はパラボラアンテナの設置やケーブルテレビ会社との契約かフレッツテレビ(両者アンテナで受信できない場合など)などが必要となり、全ての人々が視聴できるわけではない。このような状況の中で、演歌・歌謡曲の歌手が歌唱する場面を視聴することに差も生じる。

 さらに、今年の夏に放送された大型音楽番組の出演者を見ると「THE MUSIC DAY」(日本テレビ系)では演歌歌手は出演せず、歌謡曲と括られる歌手は広くみても3組ほど。「FNS歌謡祭 夏」(フジテレビ系)では和田アキ子が出演していたがコラボ企画であり、一人での歌唱はなかった。「音楽の日」(TBS系)は石川さゆりと島津亜矢が出演していたが(郷ひろみは何処に入れればよいものか)、石川さゆりはKREVAとコラボした自身の楽曲。島津亜矢はJ-popのカバー曲を披露した。これは良くない傾向ではないだろうか。一方「ライブ・エール」(NHK総合)には、さだまさし、純烈、細川たかしが出演し、自身の楽曲を歌唱した。

 現在は、サブスクリプションやYouTubeなどで多くの曲が身近になった反面、自分の好きな曲ばかりを聴けるようにもなった。そのようになると、演歌・歌謡曲は好きな人でなければ耳に入らない。だからこそ、テレビやラジオで幅広い歌手の楽曲が流れなければ、人気も出ず、セールスも伸びない。また、コンサートではキャパシティーの関係で回数を行っても見れない人も多く出てくる。衛星放送の番組出演とコンサートで演歌・歌謡曲歌手は大変かもしれないが、地上波の民放音楽番組への出演で魅力を感じ、ファンも番組の視聴率も大きく変化するように感じる。その意味では「ぽかぽか」(フジテレビ系)のイベント「ぽかぽかSUMMER FES」に丘みどりと純烈が出演したことは大きな一歩だろう。

 視聴率に関しては、7月10日から16日までのビデオリサーチ調べのデータを検索して見てほしい。「NHKのど自慢」(NHK総合)などのカラオケ番組を抜いて純粋な音楽番組だけで見ると上で述べたことがよくわかるだろう。

 このように、民放の音楽番組が演歌・歌謡曲歌手を出演させる動きがないことが、紅白への出場が少なくなる要因の一つかもしれない。

 宣伝となるが、6月の「出場歌手・曲目予想調査」で紹介した2人の歌手の曲を聴いてみてほしい。あれだけの魅力があるのにそれが多くの人に知られていないのは勿体ない。

 

⑨紅白は誰のものか

 紅白の前提にあるものは「全国民を納得させることは不可能」と言うことだ。筆者は今回の調査でそれをまざまざと感じた。しかし、紅白と言うものが「高年齢層(高齢者ではない)のための番組」のように感じる書き込みが多く見られた。冒頭でも述べた通り今回は年齢を問わず行ったが、文章の中でそれが伺えるものが多少あった。一方で、K-popを聴いている人がもっと少なくていいと意見を出しているものもみられた。どちらもあまり良い傾向とは言えないだろう。

 昨年の紅白は「若者より」と揶揄されていたが、その中で筆者自身の心に残ったものは「出場者は『年齢』と言うものを感じなく、純粋にエンタメを楽しんでいる」と言うことだ。実際的には年を重ねているが、それを感じさせないプロの凄さが見えた。郷ひろみの全力ダッシュからの歌唱や加山雄三の口とマイクの距離の遠さは確実に若手歌手に良い影響をもたらし、同世代へ勇気やエールを与えただろう。しかし、若年層は若年層でそれに負けないパフォーマンスを繰り広げていた。BE:FIRSTのダンスや日向坂46の自身のライブさながらな歌唱は視聴者に血気盛んな力やフレッシュさを与えた。

 ②でも述べたが、多くのジャンルの歌手が交わる機会が紅白(NHKの音楽番組)か「輝く!日本レコード大賞」(TBS系)ほどしかなくなってしまった。NHKの演出がマンネリ化するのもしょうがないだろう。演歌・歌謡曲の演出で戦う相手がいないからだ。先日放送された「音楽の日」(TBS系)では昨年の紅白での「ジャンボリミッキー」の評価を受け、新たな演出を生み出した。このような「高め合い」がないから「けん玉チャレンジ」になってしまう側面もあるのだろう。

 今後も、民放の音楽番組に演歌・歌謡曲歌手の出演が増えることはないかもしれない。いわゆる「若者より」は今後も続くことであろう。そして、「懐メロ」と揶揄される楽曲の披露も増えていくかもしれない。どちらの事柄もNHK・民放どちらにも言えることだろう。

 しかし、考えを回転させれば、日本で流行している曲や以前流行っていた曲を再認識・再評価できる場でもある。一方的に「ダメ」と拒否するのではなく、そこから一歩踏み出してほしい。K-popでは作詞・作曲やダンスの振り付けを日本人が行っていることがある。NiziUの生みの親J.YParkの音楽の原点が桑田佳祐や久保田利伸であることを調べることもできる。これで紅白へのK-popの出場を増やせると説明しているわけではない。

 同じようにJ-popでも演歌でも同じような発見があるかもしれない。昨年、キツネダンスとコラボした山内惠介の音楽の原点にはJ-popがあり、自身のカバーアルバムでもJ-popをカバーしている。洋楽のポップではあったが、ポップをルーツとする歌手にこのようなコラボをさせる意味は深いだろう。また、編曲を行ったヒャダインも演歌・歌謡曲をリスペクトしていることもこれの説得性を出させる要因の一つだろう。一歩踏み出せば、現在は簡単に調べることができ、番組をより楽しめるだろう。

 このような動きを動機付けさせるためにも、出場歌手の説明をしっかり行ったり、演出方法の案を視聴者(ファン)から募ったりすることもよいだろう。「全世代が納得する」までいかなくとも、「全世代が少しでも楽しめる」ぐらいまで実現できると良いのかもしれない。そのためには、制作側・視聴者側どちらも意識改革が必要かもしれない。

 

⑩NHKはなぜ「紅白歌合戦」を大切にするのか

 「紅白は過渡期」とスージー鈴木(紅白に詳しい音楽評論家)は言う。多くのメディア媒介が存在する現代、誰が何を見るかの選択肢は多くなり、世代間の繋がりが薄れてきている。それと同時に、テレビの勢いと言うものが減少している。

 しかし、そんな時代だからこそ、テレビを通して繋がれる。テレビで一喜一憂出来る喜びが愛おしく思える。今年のWBCが良い例であり、それがまざまざと感じられた。スポーツで一喜一憂するのは数年に一回の大規模大会であることが多いが、紅白は1年に1回必ずある。あるラジオ番組で10代の人が「同じ時を生きてきた人が、年の終わりに同じ時間を共有できる」と紅白を表現したメッセージが読まれていたことでもそのように感じる。

 70年間止めることなく、テレビのさらなる可能性を追い求めているNHKにとって1年に1回の紅白で得られるものは多いように感じる。それだけでなく、技術の進歩と言う面でも紅白は重要な役割を陰ながら果たしている。昨年は、それまで難しいとされていた4K無線カメラ撮影を行うため、NHK放送技術研究所は通信システムを研究し、紅白ではタイムラグなく、1分30秒の1カメラ撮影を行った。それだけでない、インカメラVFX(第72回)やAR=拡張現実(第71回、第73回など)、CGなどにおいても先進的な技術を生放送の紅白で活用している。近年はテレビとSNSをどう融合させるかと言う課題も考えを制作している。このチャレンジ精神やテレビの未来を創造すること、テレビで世代間を繋ぐことは、現代の紅白、NHKに与えられた使命かもしれない。これは、コロナ禍で無観客になっても紅白を止めなかったスタッフの想いに示されていると感じる。

 だからこそ、時代に見合う番組、テレビを目指して現在は(若しくは、これまでも)変化しており、それを続けていくのだろう。だからこそ、NHKは紅白を大切にし、評論家も「過渡期」と表現しているのだろう。

↓↓NHK放送技術研究所 関連記事↓↓

 

  終わりに

 今回の調査では151件の回答の中に多くの意見が示されており、多くの考えを巡らせることができた。この総括はあくまでも筆者の意見であり、紅白好きがまとめているものである。そのため、読者の意見・考えに合わないことも当然だと思う。しかし、多くの意見が示されたからこそ、それに対して本気で調査を行い、総評に至った。紅白歌合戦は多くの人々が注目しており、現代社会を映し出していることはこの調査・総評でも伺えた。時代遅れの考えかもしれないが、マンネリでも時代に合わなくても、「多様性がない」と言われてもやり続けることが大切なのかもしれない。本当に日本社会を映し出しているとするのなら、紅白が終了したとき、日本社会がおかしな方向へ行くかもしれない。

 また、これも参考にしながら9月に開示する「出場歌手・曲目予想調査」を行うこととする。

 最後に毎回のことではあるが、紅白への意見はNHKのお問い合わせに書いてもらいたい。この意見が多いほど、NHK・紅白は変化するかもしれない。それが、テレビの未来を明るくするだろう。

↓↓NHKお問い合わせ↓↓