■管理ゼロで成果はあがる ~「見直す・なくす・やめる」で組織を変えよう
著:倉貫 義人
今回は「マネジメント」について考えてみようと思います。
ピーター・ドラッカー曰く、「マネジメントの仕事とは組織に成果を上げさせること」
作業管理や監視ではなく、組織に成果を上げる事こそがマネジメントの本質。
「管理」の直訳として「マネジメント」が充てられる事はありますが、ビジネスの本質を考えれば、この2つは異なるものであり、「管理ゼロ」と「マネジメント」は矛盾するものではありません。
いやいや、そんなの性善説を前提にした理想論でしょ
そんな疑問を持つ人も少なくないでしょうし、私もその一人でした。
しかし
もし本当にそんな方法論があるならば興味はある
という方であれば、
本書は一読の価値があると思います。
対象を「組織」から「個人」に変えれば、「セルフマネジメント」になります。
これは自分自身に成果を上げさせる事に他なりません。
その意味で、本書は管理職だけでなく、個人事業主やフリーランサーにも役立ちます。
さて、本書の構成は以下の通り
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〈目次より引用〉
黄色のマーカー、※の小文字部分 は私が勝手に加えたものですが、あしからず。
第1部
生産的に働く ~楽に成果をあげるために“見直す”
・やり方を見直す ~「ふりかえり」で抜本的に生産性を改善する
・生産性を見直す ~「時間対効果」の高い仕事をする
・タスクを見直す ~「タスクばらし」で小口化する
・やる気を見直す ~無理にあげない、なくさない状況をつくる
・信頼関係を見直す ~「※心理的安全性」を生み出す環境
(※心理的安全性・・・Googleのリサーチチームが「心理的安全性を高めると、チームのパフォーマンスと創造性が向上する」というレポートを発表した事で、マネジメントの分野で注目されている概念)
・会議を見直す ~口を動かすだけでなく、いっしょに手を動かす
・雑談を見直す ~ホウレンソウから「ザッソウ」へ (※「ザッソウ」≒ 雑談・相談)
・社内業務を見直す ~人手に頼らない「業務ハック」で改善を続ける
・価値を見直す ~受託脳よりも提案脳で考える
第2部
自律的に働く ~人を支配しているものを“なくす”
・管理をなくす ~セルフマネジメントで働くチームをつくる
・階層をなくす ~「※ホラクラシー」組織を実現する仕組み
(※ホラクラシー・・・ 上司や部下、肩書きや役職のないフラットな組織構造 本書では従来型の上意下達の「ヒエラルキー」組織の対立概念として)
・評価をなくす ~個人の成長と会社の貢献の「すりあわせ」をする
・数字をなくす ~組織のビジョンよりも自分のためならがんばれる
・組織の壁をなくす ~信頼しあえる企業文化の育て方
・急募をなくす ~仕事があっても、いい人がいなければ採用しない
・教育をなくす ~自分の頭で考える社員の育て方
・制度をなくす ~本質ありきで考える「そもそも思考」
・通勤をなくす ~働く場所に縛られない「リモートチーム」
第3部
独創的に働く ~常識や慣習に従うことを“やめる”
・既存のビジネスモデルに従うのをやめる ~納品のない受託開発~
・顧客を説得する営業をやめる ~対等な関係を作るマーケティング
・新規事業の指示命令をやめる ~部活から生まれるイノベーション
・規模を追求することをやめる ~組織の大きさもコントロールしない
・会社らしくすることをやめる ~文化をつないでいくコミュニティ
〈引用おわり〉
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実際には、本書の「目次」にはそれぞれの小見出しの下に、さらに細かいポイントまでが併記されていますが、本ブログでは割愛しています。
しかしながら、これだけでも、日頃の問題意識のアンテナに引っかかるワードが何かしら見つかるのではないでしょうか?
私の場合だと、黄色でマーカーを付けた部分がそれにあたりますが、本書ではそれぞれについてポイントが上手くまとまった解説が成されており、全体の構成、流れもとても読みやすくできています。
マネジメントの参考になるポイントが盛りだくさんで、色々紹介したくなる気持ちは山々ですが、本書は本文269ページ、文字も読みやすく割と気楽に読めると思うので、上に引用した目次で何かしら引っ掛かる所があれば、実際にお手にとって読んでみてください。さほど時間はかかず、得られるものは多いでしょう!
本書で紹介されている考え方は、組織において導入・実行されれば効果的なものが多いと思います。
しかし、導入・実行という部分で、皆さまの所属される組織に於いては、少なからずハードルが存在するのも事実でしょう。
ハードルの理由は色々考えられますが、きわめて大雑把にくくってみると
1)精神体質が古い (昭和の体育会的体質)
2)考え方が古い (高度経済成長期の成功体験に引きずられ、※VUCAの時代について則していない)
という部分が大きいのではないでしょうか。
※VUCA
Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)という4つの言葉の頭文字から取った言葉で、現代の経営環境や個人のキャリアを取り巻く状況を表現するキーワードとされている
せっかくなので、1)、2)、それぞれについて処方箋に成り得る参考書籍も紹介しようと思います。
1)古い精神体質への処方箋
■常勝集団のプリンシプル ~自ら学び成長する人材が育つ「岩出式」心のマネジメント
「典型的な体育会系組織」というイメージのある大学ラグビー部において、面白いイノベーションが起っています。今年惜しくも10連覇は逃したものの、帝京大学で岩出監督が起こしてきた改革の要諦が分かり易くまとめられた本書は、マネジメントに携わる方々に多く読まれて欲しい一冊です。古臭い「体育会系」のイメージが一変するやもしれません!
岩出監督は、非常に研究熱心な方でもあるので、マネジメントや心理学について、王道的メソッドから、最新の事例まで色々研究し、実際に現場のマネジメントで検証した結果をシェアしてくれています。本書のコラムには、マネジャーであれば知っておきたい基本事項がコンパクトに紹介されており、参考文献もしっかり掲載されています。マネジメントに役立つ心理学的トピック全般を網羅的にチェックしたり復習したい場合にも役立つでしょう。
2)古い頭(考え方)への処方箋
■米軍式 人を動かすマネジメント ~「先の見えない戦い」を勝ち抜くD-OODA経営
行動経済成長時代、「アメリカ」というモデルがあり、追いつき、追い越せでやってきた時代はPDCAを我武者羅に回せば回すほど結果が出た時代だとも言えます。しかし、その後「失われた20年」の時代を経て、これが30年にもなろうとしているVUCAの時代、旧態依然の考え方を引きずっていては、組織も自分も成長が鈍化します。
与えられた「Plan」の破綻に現場が気づいたものの、ただちに修正する柔軟性と臨機応変さがなければどうなるでしょう? そもそも修正権限すら与えられなかった場合どうなるでしょう?
実際に湾岸戦争で多国籍軍に敗れた、イラク軍の敗因は次の2点。
1)計画通りに進まなかった
2)兵士が自主的に動けなかった
そこで、PDCAに変わるモデルとして注目されてきているのが「OODA(ウーダ)」(Observe 観察 → Orient 方向付け → Decide 決心 → Act実行」と呼ばれる新しいモデルです。この「OODAループ]について、ロジカルに、また著者一流のストーリーテリングの手法をもって面白く解説してくれていますので、興味を持った方はこちらも合せて読んでみる事をオススメします。
さて、今回は「管理ゼロで成果はあがる」を皮切りに、マネジメントの参考になる書籍3冊を紹介させて頂きました。
今日はこんなところで。
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江古田Music School 代表 /銀座ST.SAWAIオリオンズ 専属ピアニスト
岩倉 康浩
ekoda-music.com
ginza-orionz.com