DIR EN GREY 『TOUR15 THE UNSTOPPABLE LIFE』 | MUSIC TREE

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邦ロックを中心に批評していく
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DIR EN GREY
TOUR15 THE UNSTOPPABLE LIFE
2015年5月3日
in なんばHatch

    青く、仄暗いステージにSE.が流れ、メンバーが一人づつ登場、「咀嚼」から始まった。shinyaのタイトでリズムカルなドラムをガイドに、ディストーションのかかったギターが重くのしかかり、そこに京の高音ボイスが突き抜ける。
昨年見たライブでは、当然アルバムの1曲目「Un deux」を最初に持ってきていたが、この始まりの方がすぐ彼らの世界に入り込むことが出来た。こちらの方がDIRエキスを沢山感じられるからだ。

    この会場で彼らを見たのは僕自身は初めてだが、やはり彼らはバックの映像にこだわる。時には社会風刺的に、そして過激に、DIRの演奏とリンクしていく。怪しさを醸し出すスクリーンと共に「鱗」「Midwife」などが人間的な闇の部分を抉り出そうと、煽ってくる。

    中盤に、本日のハイライトと言える場面が訪れた。「 禍夜想」「懐春」「Phenomenon」の連打だ。
特に”懐春”は今のDIRの完成型と言っていい。
Toshiyaの脈拍の様に強く打ち続けるのベース。バンドをヘヴィネスたらしめているshinyaの冷静かつ重きドラミング。ロックとしてメロディーの美しさを提示するDieのギターソロ。それらが、この曲のライブでの肉体性をしっかり作り出している。おそらく、コンポーズの中心を担った薫の作り出す旋律と、V系を通過した後の京のボーカルが、今彼らの考えている答えを言葉にしている様だ。

    後半にもう一つ特筆すべき点があった。京が特にクルっていた場面だ。つぶやき、表情、動きが、まるで、劇中者を彷彿させる。何かに取り憑かれた京が、こことは違う空想の場所に立っている様だった。その後の「輪郭」は、やはり前振りの余韻を引きづりつつ、叫びに近い、ボーカリゼーションで曲が進む。迫真の演技に近い、狂気がない交ぜになった表現の先には、まともなことを言ってしまうが、今の日本の現状を憂う歌詞を含め、痛烈に響いてくる喜劇と言って良いだろう。

    本編ラストは、当然DIRの過激さ&美しさの最新型「Revelation of mankind」、そして「The inferno」で幕を閉じる。
アンコールでは、「激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇」そしてお馴染みの「羅刹国」でラスト。ハードコアでメタリックかつヘヴィーなステージで締めくくった。

    今回のアクトを観て思ったのは、ある意味、”DIR EN GREY”という存在は、それ自体が一人歩きするくらいのロックアイコンになってしまっている、ということ。当たり前だというかもしれないが…
僕が言いたいのは、京はもう自身の世界観を作り上げつつあるし、語弊のある言い方になるかもしれないが、反対に京がいないDIRだとしても、バンドサウンドとしてひとつの到達点に達しているのだと思う。

    だから個々のメンバーが自由にぶっ飛んだとしても、別に良いのだ。今の彼らを繋ぎ止めているのは、バンドメンバー間の薄っぺらく無くリアルな絆と、それを見守る彼らの音楽を切望するリスナーとの繋がりがあるからだろう。それが今、バンドの”根源”になりつつあると思う。
そんな地点に、彼らは立っているのだ。