sukekiyo『VITIUM』 | MUSIC TREE

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邦ロックを中心に批評していく
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異端に生きたいと僕は時々思う。ただ、この『VITIUM』の甘えを許さない異常さの前では、そんなちんけな考えなどねじ伏せられてしまった。
”窓の外に捨てられた 生まれたての愛の残骸” (foster mother)あぁ、無情。でもこれは、以前から京の歌詞に描かれるシーンでもある。

本作はsukekiyoのファースト・ミニアルバム。デビュー・アルバムに続く二作目である。今回、顕著に感じられるのは、DIR EN GREYの京らしさの片鱗を感じさせる以上に、バンドとしての独立した色彩が出てきていることだ。

音楽的な特色は、シチリア島の風景を想起させるギターの音色が端々に散りばめられていること。おそらく、作品タイトルにラテン語が使われているのもそれに起因するのだろう。そこからのイメージで、あの名画を彷彿させる。つまりはそこから”死”というキーワードを作り出しているのだ。

逆に京の歌唱は、和を強調したもので、そこに多種多様な”愛”を表現している。特に「雨上がりの優詩」は昭和歌謡をベースにした曲調で、彼の声からは歌う必然性と、自身が求めている音楽アプローチがそこにあることも提示している。

愛と死。2つのカードが並べられた。歌詞に含まれた狂気と共に、それらを突き動かすのは、やはりヘヴィーロックな音像であることは間違いない。作品の根底を流れる激しさが、しめっぽさや女々しさなどを吐き棄てていく。

sukekiyoというバンドを、京が、僕たちがどう位置付けていくかまだ未知数なところはある。
でもそれは、世間がロックをどう捉えていくかと共鳴する事柄なのだ。