「TOUR14-15 BY THE GRACE OF GOD」
2014年12月7日(日)
なら100年会館
神秘的な雰囲気のステージが現れて、メンバーが一人づつ登場。薫の幻想的なギターの音色と彼らのライブではお馴染みになった、バックに映し出す、アーティスティックな映像。全員が揃い、静寂に包まれた風景から、一音々奏でられ、彼らのアクトが始まった。今月発売予定のアルバムの曲を軸に進んでいく中、
『SUSTAIN THE UNTRUTH』からは、今の彼らの勢いが伝わってくる。会場の熱も徐々に上がりつつ、『輪郭』のディープで美しい京の声が会場全体に響く。こういう曲もライブでは、特筆すべきものだと思う。
今回、彼のボーカル・スタイルを見て、少し変化しつつあるのでは?と感じた。やはりそれは、sukekiyoでの活動も影響していると思う。いまの彼からは、艶やかで、スタイリッシュな佇まいを感じさせるのだ。
また、新作を迎えるにあたって、気になるのは、バンドの次のベクトルだろう。アルバムの世界観はまだ知る由もないが、ライブ中盤に演奏されだ新曲達を聴いて、直感的に思ったのは、王道なロックをいまの彼らがかっちり鳴らそうとしていることだ。ベヴィーにもシリアスにも振れすぎないストレートな曲は、最近の彼らからは殆どみられなかったが、そのような雰囲気が伝わってきた。
終盤、『OBSCURE』や新曲が絡まり、エキサイティングしたあと、ラストの『激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇』で昇天、本編の幕が閉じた。アンコールでは、『逆上堪能ケロイドミルク』や、過去のいわゆるV系ロックバンドとしてメジャーシーンにいた頃の楽曲も演奏され、人気曲でもあり、当然の盛り上がりを見せた。このバンドが今、過去もすべて取り込んだ上で、前に進もうとしていることが、このライブからも伝わってきた。ディルのハードでラウドな楽曲が畳み掛け、その最後に演奏された曲は、言うなれば、激しさ溢れる曲の中に、一本美しき旋律を突き刺した、と言えるだろう曲でエンドロールを迎えた。ハードコアやヘヴィーな曲を体現しながらも、このバンドが持つ”和”は抗いようのない事実として現れる。それが彼らの美的感覚として楽曲にも現れてきた結果、新たな変化の季節が来たことを告げていた。新作が楽しみである。