GRAPEVINE 『club circuit 2014』 | MUSIC TREE

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邦ロックを中心に批評していく
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GRAPEVINE 『club circuit 2014』
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2014.11.9 なんばHatch

『ふれていたい』から始まった、club circuit 大阪公演。ご存知の通り、これはレコ発とは関係なく、バインが全国主要都市を回るツアーだ。
最初から田中が笑顔で演奏をしている感じからも、このライブがアルバム単体を表現するためのものではなく、彼ら自身が持つ多数の楽曲を演奏することと、それを渇望するフォロワーが作り出す独特のライブであることが分かる。バインの歴史が続いて行けばいくほど、意味合いが増してくるものでもある。
序盤はやはり初期の名曲が、会場の熱気を徐々にあげていった。『想うということ』『discord』など、永く聴いてきた人なら尚更だが、そうでなくても、このメロディーラインに心を揺さぶられない人はいないだろう。田中がMCで言ってたように”この頃めちゃめちゃ売れてましたから”というネタからも分かるように、バインを語る上でこの時代の彼らはとても重要なのだ。
夏に行われたフェス”音魂”にバインが出演したとき、30分間、名曲を畳み掛けたようで、それが大層受けたとのこと、(まぁ当然なのだが)今日それを期待していた人には、ガッカリな選曲でお届けしますという田中の関西人特有のノリがMCでは炸裂していた。
といいながらも、『ぼくらなら』や名曲に絡まりながら進んでいった。
また『Good bye my world』は相変わらず、ライブでは凄まじく熱量が上がる曲で、バインの曲ではよくあるが、音源で聴く何倍もロックを感じる事ができるのだ。彼らがそういうバンドであることがよく分かる。『Neo Burlespue』などバインのコアな部分が出た楽曲たちが続いていく。
また今回の一つの重要な事項ある、レコード会社移籍後の新曲発売間近ということで、その曲も演奏されることになった。表題曲以外の2曲はどちらもメロディーのはっきりした、田中の歌を聴かせるミドルテンポな曲と言える。ただやっぱり、サウンド全体としてはロックバンドな雰囲気が漂い、今のバインが歌うものであることは確かだ。そして田中が新曲やりますとか言わないんでと言っときながら、曲名まで紹介した『Empty Song』西川のギターリフの力強いうねりから、田中の伸び続ける声と奏でられるメロディーが突き抜ける、疾走感のある楽曲は、あの僕たちは飛べないことがわかってるにも関わらず、跳ぶんだよという曲『FLY』を彷彿させる。正にバインだと言える、ニヒルと希望がない交ぜになった地点を見れる曲だ。その後、ディープサイドな『Metamorphose』『ONI』や『CORE』などの曲が深く々、会場を深海へ誘い、そこにある光を見せてくれた。本編ラストは『風の歌』が総てを吹き飛ばすような清々しさと共に幕を閉じた。
アンコールでは『南行き』『指先』、そしてバイン史上最もメロディーアスでポップな『放浪フリーク』で美しく、軽やかに締めくくった。彼らは歌詞やメッセージだけで何かを伝えるのではなく。音世界総てで伝えようとする。どんな壮絶な思いさえも、簡単な一振りで蹴散らすことができる。彼らの深さと軽さこそ、ロックの根源なのだと改めて想った。