Base Ball Bear『二十九歳』 | MUSIC TREE

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邦ロックを中心に批評していく
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『初恋』辺りからベボベは変わってきた。そう感じていたが、本作で確信を持った。タイトルだけみると続『十七歳』に思える。ただ、時間軸を過去へ捉えたものと、本当の今を歌った今作では明らかに違いがあるからだ。初恋の存在を更新した彼らは、ついにバンド自体を更新することに成功したと言える。例えるなら、パソコンのOSアップデートに似ている。今のリアルに対応していくために更新し続ける必要があったのだ。作品全体としては、ロックバンドが後世に伝えるべきロックのあり方をきっちり提示出来ている。また、多種多様なミュージシャンとのコラボレーションをへて、ポップアイコンとしてのベボベも機能しているようだ。また、小出祐介自身のアーティストとしての意識が、今まで以上に高まってきたと感じられる。それが顕著に出ているのは、ラストから2曲目の「魔王」での”いないことにされていた 僕の呪いが 君の傷を癒す お呪いになりますように”という歌詞。こんな魔法ような言葉を吐けた小出は、もう昔の自分ではいられないはずだ。デスクトップの画面から抜け出そうとしていた矢印は、今確かに、新世界への扉をクリックし始めている。