伊集院静氏についてー書いて欲しいことは書かなかった | あずき年代記

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ブログの恥はかき捨てかな…

作家・伊集院静氏逝去73歳。


立教大学文学部日本文学科卒業で、完全左翼の小田切進さんのゼミにいた。


卒論は、戦後派作家第一号の梅崎春生。


梅崎さんは、戦後派作家という呼称だが、梅崎春生の本質は私小説型のマイナーポエットだった。


私小説型といってもタイプはいろいろあり、梅崎春生は明らかに梶井本次郎の影響が濃かった。


伊集院さんもそうで、視覚の良さから滲んでくる叙情は梶井基次郎と同類項、このあたりのデッサン力に、画家志望の一面がよく発揮されていた。


とくに初期の短篇においてである。


一方で檀一雄を連想させるイメージがあったが、いろいろ差し障るのか、伊集院版の「火宅の人」はついに描かなかった。


時効だと判断するから実名あげるが、桃井かおり、薬師丸ひろ子、松田聖子、夏目雅子、篠ひろ子さんらをモデルとした私小説を描かなかったのは文藝一神教の当方から見ればものたりなかった。


担当編集者全員、含んでいたことではないか?


篠ひろ子さんとの結婚生活、さらにお孫さんたちとの交流を描けば庄野潤三ふうの作品もあり得たのだが、そちらにも筆を割かなった。


もしかすると、こちらはこれからだったかもしれないが。


梅崎春生、檀一雄、庄野潤三、伊集院静は水瓶座座であり、わたしもその星座だが、この星座の特徴は、フレンドリーな人たらしぶりにある。


伊集院さんはその典型みたいなひとで、藝能人たちから、やたら慕われている。


また近年は悪しき山口瞳ふうであり、安倍晋三政権や旧ジャニーズ事務所寄りでいただけなかった。


作品より生き方の八方美人さが回想される作家では、30年後には忘れさられているだろう。


…稲垣吾郎さんの深夜番組で小島慶子さんと寿司屋で喧嘩になり、


「だから俺は女と寿司屋に来たくなかったんだ」


と怒りだし、プロデューサーを呼びつけて帰ってしまった映像を観たときは、酷い時代錯誤だとおもった。


こういう封建男子が意外に女性読者に人気があるのは不可解である。


太宰治にもそういう部分があり、色気のある男子作家は治外封建であるらしい。


ジェンダーのバランスは難渋である。


伊集院静文藝に厳しい評価を出したのは野坂昭如さんと田辺聖子さんであり、それはそれぞれの寸評を御覧頂きたい。