氷の下からよみがえるもの | さまようブログ

氷の下からよみがえるもの

Nature Climate Changeが、ある記事を無料公開しています。

http://www.nature.com/nclimate/journal/v1/n5/pdf/nclimate1167.pdf


 「気候変動に伴い、北極の氷や海水中に封じ込められていた過去に排出された汚染物質が再揮発しており、それは今後長い間継続する」というものです。PCBHCHDDT など、農薬や殺虫剤としてかつて大量に使用されていた(そして現在ではほとんど使われなくなった)物質が、再揮発の例として示されています。

 

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IPCCのシナリオA1Bによる、2100年までのPCB、HCHの大気中濃度予測。同論文より。



 PCBやHCHはすでに使用が禁止あるいは厳しく規制されており、新たに大気中に排出されることはほとんどありません。したがって今後は減り続けてもよさそうなものですが、実際には2030年頃に大気中濃度が最大に達するものが多く見られます。PCB153やγHCHに至っては、2100年になってもまだ増加を続ける予想です。

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PCB153(左)およびγHCH(右)の構造

 これらは直ちに健康被害を与えるほどのものではないでしょう。しかし、今後の注意深い観測が必要な事象かもしれません。

 また、これらの影響は有機物に限らず鉛や水銀などの無機物でも現れてくるでしょう(鉛は揮発というより流出という感じですが)。

http://www.geochem.jp/journal_j/contents/pdf/39-4-183.pdf

 メタンなど強力な温室効果ガスも封じ込められていますし、氷の融解は海面上昇以外にもいろいろな影響をおよぼすもののようです。