中国の排出ガス削減への取り組み、逆に温暖化を「加速」 | さまようブログ

中国の排出ガス削減への取り組み、逆に温暖化を「加速」

 という記事が出ていました。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110708-00000016-rcdc-cn


 一瞬「ん?」と思ってしまう記事ですが、この記事は表現が不親切というか、記者さんは「二酸化硫黄は温室効果ガス」と思い込んでいるのかな、という印象を受けました。

 

・「中国工業業界が二酸化硫黄(SO2)を含む排出ガスの削減に取り組んだことで、世界的な温暖化のペースが緩まったと見られていたが、逆に地球の気温が再び上昇していると米国の研究報告が指摘している」 とあります。

 これでは、「中国がのSO2削減に取り組んだため温暖化のペースが緩まった」すなわち「SO2が温暖化の一因」と読んでしまいそうです。

 しかし実際には反対です。以前 も書きましたが、SO2はむしろ気温を低下させる方向に働きます。中国がSO2の削減に取り組んだため温暖化のペースが加速した、と取る必要があるのです。

 
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1750年時と比較した各種気体の放射強制力の変化。SO2は地表付近を冷却する方向に働いてきた。IPCC AR4 WG1 fig.2.21参照より。  


 

 次に、

・「大気中のSO2を取り除くことが温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)を大気中に長期間残留させることを招いており、その結果、温暖化が再び明確になりつつある」

 という文。

 SO2が減ったからと言ってCO2が大気中に長期間残留するようになるという話は、私は聞いたことがありません。そうではなく、石炭を燃やした時に排出されるCO2(温暖化を進める方向に働く)とSO2(温暖化をと抑制する方向に働く)のうち後者のみを削減したため、温暖化傾向が顕著になっている、ということでしょう。

排ガス中のSO2を取り除かれるようになった一方で、温室効果ガスであるCO2はそのまま排出されており、その結果、温暖化が再び明確になりつつある」くらいの表現がより正確なのではないでしょうか。


 言うまでもありませんが、SO2排出量を削減するのは非常によいことです。地球温暖化問題は確かに深刻な問題ですが、だからと言ってSO2による健康被害を許容してよいはずはありません。SO2を増やすことではなく、CO2を減らすことによって、温暖化対策は達成されるべきでしょう。


 ・・・そもそも、1998年~2008年くらいの時期は本当に温暖化のペースが緩まっていたのかという疑問があります。また、例え温暖化のペースが緩まっていたとしても、それが二酸化炭素や二酸化硫黄で説明できるとの考えも、やや疑問があります。



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世界平均気温の推移(再掲 )。温暖化が緩まっていたとは見えないが・・・。



 なんだかちょっと、もやもやするニュースでした。原文が見つかれば読んでみたいところです。


2011/07/18 07:30追記

忘却からの帰還 」のHPで詳しく紹介されていました。こちらもぜひ。