風力発電は気候を変える?
強風が吹き荒れるクリスマスイヴです。佐田岬半島の風車群 は猛烈に働いていることでしょう(もしかすると、強風すぎて止めている?)
クリーンエネルギーの代表的存在といえる風力発電。とはいえ全く問題が無いわけではなく、これまでにも、バードストライク や低周波問題 などがありましたが、さらに、予想外と言っていい疑念が浮上してきたようです。
・風力発電の風車が回ることが気候変化を招いている恐れがある(DOI: 10.1038/46810a)
http://www.nature.com/nature/journal/v468/n7327/full/4681001a.html
あらかじめ言っておきます。現段階ではまだ「恐れがある」であり、科学的に立証されたわけではありません。「風力発電はダメだ」などという結論を導くようなものではありません。
また、ここでいう「気候変化」とは、「実は風力発電は温室効果ガスを多く発生する」とか「風力発電の方が火力発電よりも温暖化をもたらす」などの意味ではなく、風車が回ることそのものが気候に影響をおよぼす可能性を示しているのだということを理解してください。
その上で、要点を私なりにまとめると・・・。
・内モンゴル地方では、風車建設後は雨が降らなくなったと牧夫たちが訴えている。ここ数年のものではあるが、気象データもそれを裏付けている。
・巨大な風車は大気の層をかき乱し、水の蒸発パターンを変化させて、これが降水量の変化をもたらしているのかもしれない。
・シミュレーションによっては、降水パターンの変化による損失は、風力発電による利益と釣り合うほどのものになる
・観測データも、この25年間、風車は地表付近の気温に大きな影響を与えた可能性が示唆されている。つまり、夜の気温低下と昼間の気温上昇を抑制している可能性がある。
などと報告されています。
Natureは、
「風力発電が気候に影響を与えうるという報告は無視できるものではない、政治的な理由からこのことに関する研究を妨げるべきではない」
という内容のコメントをしています。
どういうことかというと、このような報告が最初にされたのは2004年だったのですが、その直後から風力発電に関連する業界から猛烈な批判が沸き起こったのだそうです。
Natureは、「研究の妨害すんな!」という、ある意味当然の主張をしているのです。
難しい問題ですねえ。風車と気候の因果関係が立証されるまでには、いくらか時間がかかるでしょう。立証されるまでは風車の建設は凍結すべきではないのか、という意見も出てくるかもしれませんね。
しかし、風力発電以外の発電にも、問題点は多数あるわけです。それらの問題点と風力発電の問題点(あったとして)を比較して、どちらがより問題が大きいのかを比較するのは、かなり難しいことでしょう。
そもそも、「夜暖かく、昼涼しくなるのは、農業等には好影響を与える(静岡の茶畑の例 から想像できる通り、霜害が減少します)わけで、この利益まで考え合わせると果たしてマイナスの影響の方が大きいと言えるのか?」という意見まであるようです。
おそらく、はっきりした結論が出てくるまでは風車の建設は今まで通り続くことでしょう。
この問題は、まだ研究が緒に就いたばかりなのです。現段階で建設を止めるのは、さまざまな要因を考えるとかなり困難なことでしょう。
さらなる研究を!結局はこれにつきるかな、と思います。