われわれはどこまで気温上昇に耐えられるのか② | さまようブログ

われわれはどこまで気温上昇に耐えられるのか②

 先日、 温度上昇で人間が住めなくなる地域が生じる可能性があることを紹介しました。

 今回は、「住めなくなる」までは行かないですが、「住みにくくなる」記事の紹介です。ただし、前回のように「次の世紀には」という先の話ではなく、今世紀中のお話。


 2003年、ヨーロッパは猛暑に見舞われました 。全ヨーロッパで熱波による死者は7万人に達し、農業等への被害額は130億ユーロに達したともされます。これは、起きつつある気候変動がもたらした重大な影響の一つではないかと指摘されています。

 今後は、このような熱波が頻発することになるのでしょうか?nature news 、Nature Geoscience(doi:10.1038/NGEO866 )によると、答えはイエスです。中位の温室効果ガス排出シナリオを採用してさえ、今世紀末には、ヨーロッパの地中海沿岸を中心に過酷な熱波が頻発することが予測されました。

 さまようブログ

図1:今世紀末、ヨーロッパで40℃以上の熱波にさらされる地域。イベリア半島南部、ポー川流域、ドナウ川流域など、地中海沿岸かつ低地では年40日も40℃を超える熱波にさらされることになる。ドイツやベルギーなど北ヨーロッパでも40℃以上の熱波にさらされる日が生じる。


 先日の記事でも湿度を問題にしましたが、ヨーロッパでも温度上昇に伴い湿度上昇が起きると計算されました。これは、人間の健康に非常に悪影響を及ぼします。また、このシミュレーションでは、都市化による気温上昇(ヒートアイランド現象)は加味されていないので、実際にはローマなどの南欧大都市ではさらに状況は深刻なものとなります。

 気温の上昇と湿度の上昇、さらには大気汚染物質(光化学スモッグなどは気温が高くなると深刻化する )があいまって、ヨーロッパ主要都市では、死亡率が上昇することになります。


さまようブログ

図2:主要なヨーロッパの都市におけるapparent temperature(体感温度)と死亡率の関係。体感温度の計算法はNOAA 参照。 体感温度が30℃を超えるあたりから、死亡率は急速に上昇誌する。特に、アテネ・ブダペスト・ミラノ・パリ・プラハ・ローマ・トリノなど、南ヨーロッパの平地にある大都市では極めて顕著。doi: 10.1097/EDE.0b013e318176bfcdより。



 猛暑は真っ先に、子供やお年寄りや病気の人などに深刻な影響を及ぼします(2003年がそうだったように!)。

 もちろん、人はある程度暑さに対応することは可能です。この予想が現実になったからと言って、ただちにローマが人が住めない地になるわけではありません。しかし、当然ながら、何の対策もしないでいると、南ヨーロッパは今より過酷な社会になることもまた事実です。