いわゆる「クライメイトゲート事件」雑感 | さまようブログ

いわゆる「クライメイトゲート事件」雑感

 そもそも「クライメイトゲート事件」という名称自体が、有罪が確定したかのような印象を与えるもので問題があると思っています。が、すっかり定着してしまったようなので、とりあえずここではクライメイトゲート事件としておきます(なお、wikipedia では賢明にもその名前を避け、クライメイトゲートで検索すると転送されるようになっています。)

 

 クライメイトゲート事件は、簡単に言うと「ハッキングによりメールを入手し検討した結果、気候変動問題の研究者がデータの不正操作を行っていた可能性があることが分かった」というものです。去年の12月に報道され騒ぎになりましたが、このほど「研究を裏付けるためにデータを隠したり改ざんしたりした証拠はない」とする報告書が出されました。

http://www.cnn.co.jp/science/AIC201004010004.html

 そもそもハッキングという行為が犯罪であることは言うまでもありません。不正の内容というのも(もし不正の内容が本当であるとしても)大局に影響するようなものでもありません。また、ハッキングされたCRUは気候変動研究の拠点のひとつですが、CRUだけが気候変動研究をしているわけではなく、全世界で気候変動研究は行われており、それら全てが人為的な要因による気候変動を支持しています。

 つまり、はっきり言って今回の報告書の結論は「当たり前のこと」です。勝ち目がない訴訟を起こし、このたび原告敗訴の判決が出た、という話に近いです(原告は上告するかもしれませんが)。


 ただ、今回の件で、CRUのジョーンズ博士は自殺まで考えたとも報道されています。

http://www.google.com/hostednews/afp/article/ALeqM5gVcgsgWik5w7s-vMhYuYJra5IiYA

 大学などの研究機関や、国連やIPCCなどの検討機関も、この問題に対応する必要に迫られ、気候変動問題の理解やそのための対策検討などは一時的に停滞したかもしれません。となると、そもそも勝ち目のない「戦い」ではあったのですが、気候変動に懐疑的(というよりは、否定したい)人たちは、ある意味その目的を果たせたのかもしれません。もしそうだとすれば、これは全く残念なことです。 

 とはいえ、かつてES細胞研究で(こちらは本当に)大規模な不正があり 、研究が一時的に大打撃を受けたことがありますが、それにもかかわらずその後研究は進み、現在のiPS細胞に代表されるように花形的な分野であり続けています。一部の学者が不正をしていても、総体としてES細胞に関する研究は価値があるものだったのです。

 それが今回は、一部の研究者の不正の証拠すらなく、当然ながら総体としての気候変動研究の価値は揺らがないのです。研究や対策が大規模に遅延することはない、気候変動研究はそれほどヤワなものではないだろうとも考えています。