星の女子さん14
『私立探偵 西郷九郎と九人の女』
第一話『虫を愛でる女』を観た。

①「劇評」では無く「感想」なので、
良いも悪いも感じた通りに素直に感想を書く
②偉そうな事や知った風な事は絶対に書かない
③感想文は作品内容についても触れる

上記3点のルールに従って、感想。


初めての星女子(言いたくなる)観劇。

「不条理+おとぎ話」なテイストを想像していたので、少し違った。※今作が特別なのカモ。

先ず目を惹かれたのが舞台美術。
創り込まれているのは勿論の事、
円頓寺レピリエという空間の活用具合が
素晴らしかった。
作中の設定でも探偵事務所は
「Bar パプリカ」を間借りしている事になっていて、この辺り、計算と設定の妙が活かされていて良き。

人物設定は如何にも探偵モノ然としていて、
一見すると不器用そうで兎に角人の良さそうな探偵。優秀な助手。若手刑事に、気心の知れた間借り先のオーナー(シブい)。

入りからして安心感しかなく、
上質な時間をゆっくりと楽しめる趣向に。

実際にコーヒーを飲みながら観られたら更に素敵だったのカモ。

ストーリーは驚く程に凹凸が少なく、
とても滑らかに進んでゆく。
この辺りも劇空間に対してのアプローチの計算高さや配慮が伺えて素敵。

少しの事件をきっかけに少しだけ進む彼らの日常。なるほど正に第一話。



登場人物について。

探偵さんが兎に角めちゃくちゃキュート。
ストーリーの凹凸加減の塩梅はともすれば退屈に繋がってしまいがちだけれども、
西郷さんの愛すべきキャラクターに依って全ての時間が保たれていたのは本当に凄い。
素晴らしい役者さんだったなぁ。

助手も若手刑事も皆其々に魅力的。
キーマンとなる依頼人もいい意味でキャラクターが立ち過ぎていて、不気味なら不気味な程に彼女の味わいが増してゆくと云う素晴らしさ。
サングラスが似合い過ぎて擽られる。


依頼人の登場で静かにざわめく探偵事務所と
あくまでも冷静な依頼人のコントラストは絶妙。

作品構成力の高さと役者さん達の魅力に只々見惚れる。いいなぁ。

二話も三話も気になるし、
なんだったらネット番組とかで本当に連ドラ化してくれないかなぁ。
でも其れだと演劇の生の良さが損なわれちゃうかなぁ。若手刑事のうどんとか。リアル感。



ちょっとだけ疑問に感じた事を幾つか。

最初、客入れの段階から探偵さんは舞台上に居て、其処で生活をしている様な仕掛けになっている(恐らく客席側は探偵事務所の壁面)
が、一言も喋らない。

実際に芝居が始まると音楽が鳴り、
助手の女の子が登場し2人でハタキを持って、
ちょっとしたダンス(?)シーンが始まる。
そして暗転。


此処で疑問が。


この探偵事務所にとって暗転って何だ。

停電か?

と思ったけど、
暗転明けでストーリーは普通に進行してゆく。
じゃあ客入れ中に探偵さんが舞台上に居た意味は何だったんだ?
暗転したって事は、
其処(客入れからダンスシーン)までがドラマで云うオープニングな訳で暗転明けが、CM明けからの本編って事かな?

尚更に疑問が深まる。
 
更にストーリーが進んでゆくと解る事だけれど、
探偵さんは実はおしゃべり好きで寡黙なキャラクターを演じる様に努めなさい、と助手から言われていた事が解る。
じゃあ一人で事務所に居たら誰にも見られて居ないんだから「素の西郷さん」で居るべきだったんじゃないのかな?一人で居ても誰にともなく喋っちゃう。みたいに。でもこの辺りは「寡黙なキャラクターの練習タイム」だったのかな?で納得。


もう一つ。


子を持つ母親の気持ちとは如何に?

ストーリー冒頭と最後にある依頼人がやって来るんだけれども冒頭で其の人曰く、
「今から子供を保育園に迎えに行く」との事。
大体17時から遅くても18時頃かな?
と想像が付く。

で、作品終盤でもう一度登場する保育園帰りの依頼人が「大事な我が子をこんな場所に入れたくないから外で待たせてある」の様な事を言う。

子を持つ母親の気持ちとして、
日も沈み掛けた頃に飲み屋の前に大切な子供を一人で待たせていられるのかな?
幾ら嫌でも一人で置いておく方が
嫌なんじゃないのかな?

この辺りは
気持ちの流れとしては違和感を覚えた。


ともあれ、
行って良かった星の女子さん。

面白かったなぁ。
上質な劇空間。

絶対書けないなぁ。いいなぁ。