祖母がとても悲しい顔をしている。

「嫌なニュースばかりだ。」とTVを見ながら私に話す。祖母が言うには、東日本大震災、パンデミック、今回のロシアによるウクライナへの侵略。どれも自分の小さいころを思い出すそうだ。

人々が恐怖と怒りの顔をしている様子。跡形もなく日常が突然奪われるそんなところだと思う。

 

祖母は11人兄弟の一番下。そのうち男子が6人、みな出兵し戻ってきたのは1人だったとよく言っている。そしてそのあとに必ず、ひ孫(私の息子)を思い泣く。「いつかこの子たちも戦争に行ってしますんじゃないか。私たち大人は何をしてきたのだろう」と思うらしい。

祖母は認知症なので、基本的な生活は介助を必要とする。食事もお手洗いもうまくできない。しかし、心は戦争のことを覚えているのだ。しっかり刻まれてしまっている。この事実を変えることはできないが、祖母の未来を平和で穏やかなものにする努力は惜しまずやっていきたいと思う。何をしたらいいかなんてわからないけれど、隣で祖母に「うちの孫は気持ち悪い虫ばかり作ってるの」と笑いながら言われる生活を少しでも長く続けていきたい。