眼科に行ってきました | kenji-sanのブログ(骨髄異形成症候群と共に)

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2013年1月に突然の骨髄異形成症候群告知。毎日の病気の様子や療養生活のこと、暇つぶしの連載小説など載せています。

今日もアリオの眼科に行ってきました。
角膜に傷があって、それはあまりよくなっていない。
やはりウイルスも関係しているかもしれない。
もっと悪くなる可能性もありますね。
膜はとれるだけとりました。
またあさってきてください。

どうも聞いていてもよくわからない説明をしながら
綿棒とピンセットで「膜」を取っていく。
これが痛い。一応麻酔はしているのだが
痛みで顔が引ける。
するとすかさず、「動かないで、あごと額を器具に押しつけて」
と怒られる。
あさってまた行かなければ。


【私のフィクション6 =「黒い蝶」の7=】

私はその蝶のことを完全に忘れていたのに、見た瞬間
昔、石垣で見たり秋田駒ヶ岳で見たことをはっきりと思い出した。
そして、その時の陶酔感も一緒に思い出した。

黒い蝶をじっと見ていると、包まれるような安らかさを感じた。
そして蝶のところに行きたいと思った。
さっきまでとても怖そうに思えた尾根を普通に渡れそうな気がしてきていた。

そのとき、後ろから声をかけられた。
「お兄さん、戸隠山は初めてかい。この蟻の門渡りは難所だからのう。
ここを渡るには渡り方があるんじゃ。ワシの後に付いておいで。」
それは先ほど五十軒長屋で会った、年配の登山者だった。
その登山者は、私を追い抜いて尾根にまたがった。

そして前方に手をつくと、腰を少し浮かせて手の方へ前進させた。
つまりまたがった状態のままで進むのである。
これなら尾根の両側に足がたれているのでまず落ちる心配はない。
ただ何度も同じ動作を繰り返して、じりっじりっと進むのでゆっくりしか進めない。

私は年配の登山者の後に続いて同じようにして進んだ。
私は最初その登山者の動きがゆっくりでまどろっこしいように感じたが、
思ったより確実に、そして早く進むのである。
見ていると無駄な動きがない。リズムがある。
私はなるほどと思った。これだから年齢はかなり上でも私と同じようなペースで登れるのだ。

渡り終えて、私は礼を言った。すると年配の登山者は
「いやー、ワシはもう何十回もこの山に登っているからな。
それよりあんた、さっき尾根の先を見ていたようだが…」
と訊いてきた。それで私も思い出して言った。
「あっ、あの黒い蝶が…」
すると年配の登山者はちらっと顔をしかめて、
「変なものは早く忘れることだ」と言った。

私たちは戸隠山山頂まで一緒に行き、そこまでで戻ることにした私は
年配の登山者と別れた。
下山は登るときよりかなり早く、家に着いたのはまだ午前中だった。
「どこに行ってたの?」と妻が訊いたので「戸隠山」とだけ答えた。
妻はよくわからなそうだったが、すぐ忘れたようだった。

(続く)