11月23日は、国民の祝日『勤労感謝の日』です。
また、その由来となっている、宮中祭祀のひとつ『新嘗祭(にいなめさい・しんじょうさい)』が執り行われる日でもあります。
「新」は新穀を、「嘗」はお召し上がりいただくことを意味し、収穫された新穀を天神地祇(てんじんちぎ・すべての神々)に捧げ、天皇陛下みずからも食して、その年の五穀豊穣に感謝し、国家の安泰、国民の安寧と繁栄を祈る神聖な儀式です。
新嘗祭は飛鳥時代の642年、第35代天皇、皇極天皇から始まったと言われており、実に1300年以上も昔の祭儀が現代に承継されていることに驚きを禁じえません。
今や日本の収穫祭として根付いていますが、古くは「日本書紀」※1に、天照大神は孫にあたる瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)が地上へ降りる際に斎庭(ゆにわ)の稲穂を授け、これが我が国における稲作の起源になったという神話があり、また「魏志倭人伝」※2には我が国で稲作が行われていたことが記されています。
なお、瓊瓊杵尊は「天地が豊かに賑わう神」を意味し、五穀豊穣のほか、国家安寧、殖産振興の御神徳をもたらす神とされています。
※1:日本書紀(にほんしょき) 720年に完成。
※2:魏志倭人伝(ぎしわじんでん) 280~297年の間に完成。
農耕が生活の中心であった時代、豊作であることは国家の安泰、国民の安寧・繁栄に繋がる重要な要素で、収穫の際に感謝の気持ちがおのずと湧き出てくるものであったに違いありません。
時を経て、『新嘗祭』の祭日は、1948年(昭和23年)から『勤労感謝の日』に改称され国民の祝日となりました。※3
現代における「勤労」とは、肉体的な労働のみならず、精神的な方面においても一日一日を真剣に考え、物事の本質へと深めてゆく姿勢を含み、新たに創造される産業など広い意味での労働を指しています。
あらゆる方々に感謝をするのはもちろんのこと、ごく身近な家族の間でも「おはようございます」「行ってらっしゃい」「お帰りなさい」「ありがとう」「おつかれさま」と声をかけ、いたわりあう心を忘れないようにしたいものです。
そして、この『勤労感謝の日』の元となった『新嘗祭』にも思いを馳せ、「命」をいただく「食」の意味に理解を深め、体の栄養のみならず、心の栄養を育み、生きとし生けるものへの尊厳を改めて感得する機会ではないかと思います。
※3:『勤労感謝の日』 勤労を尊び、生産を祝い、国民が互いに感謝しあう国民の祝日。(国民の祝日に関する法律)