昨今のベンチャービジネスの課題 | リーダーシップの探求

昨今のベンチャービジネスの課題


しばらくぶりの投稿になります。

書き留めておいたネタはいくつかあったのだが、仕事に追われ(言い訳ですが)、なかなかまとめる時間がなく。。。
自分で文章力に自信がないので、ブログで練習せねばと改めて反省。

さて、7月の下旬に日経新聞の経済教室にて、昨今のベンチャーの課題について、3日間連続でコラムが連載されていた。
内容は以下の3点である。

■VCモデルの崩壊と見えないEXIT
 →投資したエクイティのリビングデッド化
■過去のUS(1940年代)に見る国の支援事例
 →自動車産業を成長させた事例。国が育てたい産業を絞り込み、ベンチャーが育つ基盤を整備
■バイオビジネスに見るビジネス支援(特に資金)の不足
 →将来が期待できる分野があれど、資金提供先が不足

私もベンチャービジネスに関わるはしくれとして、現場での課題を肌身に感じつつ、ビジネススクールで学んだベンチャーの課題と冷静に向き合えるようになってきた今日この頃である。
その上で、ベンチャーが成長するにあたって必要不可欠なもの、その中で外から補えるものと補えないものがある。
(ここで言うベンチャーの成長とは、持続的に成長し続けることであり、金のなる木を生み出しコガネモチ化してしまった企業は対象としていいない)

■成長に必要不可欠なもの
 1.社員が一丸となるビジョンと勝てる戦略
 2.市場機会
 3.成長に必要な資金

書いてみるとしごくアタリマエに聞こえるが、この3つが常にそろっているベンチャーは限りなく少ないのではないだろうか。
(だからこそ、ベンチャーの成功確率は低いわけで、ぱっと出のアイデアだけではベンチャーを起こせたとしても持続的に成長していくことは難しい)

この中で、外から補えるものは3.だけである。
ビジョンと戦略は例えばコンサル的に外から補ったとしても、それを突き動かす原動力は社内からしか生まれない。無論、社長の能力が問われる部分。
市場機会は自らで見つけ出すもの。成長機会を見つけ出し、スピードで勝負するのがベンチャーの強みである。

3.を生み出す方法として2つある。
1つは内部留保で生み出す方法、もう1つは外部から一発で調達してくる方法。
後者はいわゆるVCからの調達も含まれるが、実はどちらも必要不可欠である。特に前者の重要性を最近実感している。
創業したばかりのベンチャーは、ビジョンとやる気に満ちあふれているが、資金がないことはもちろん、組織としても当然ながら未成熟である。
一発でかい案件を取って、スピード重視で「次行くぞー!!!」と投資をしてみたものの、運転資金不足に陥るといったケースもままある。つまり、足元を固めておく、その習慣をつけることが重要なのである。その積み上げが、次のビジネスにつながっていく。いわゆる「弾み車」が回るスキームである。
とはいえ、まとまった資金を調達することも大事であり、例えば前述のバイオベンチャーのように、「せっかく意義があり、成長するビジネスが存在するのに、世の中なんとかならないものか」と悩んでいたのだが、自分の中で「ベンチャー基盤作りに国の支援が必要」という出た結論が出た。

そこで、官製ベンチャーキャピタル「産業革新機構」の誕生である。
(今思えば、7月下旬のベンチャー特集の記事は、このプロローグだったのだろう。ただ、原稿をしたためている間に政権が変わってしまったので、今後どうなるかはなんとも言えないが)

参考:産業革新機構について(経済産業省)
http://www.rieti.go.jp/jp/events/09070201/pdf/5-3_nishiyama.pdf

官製ベンチャーキャピタル「産業革新機構」への期待と不安
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20090714/200070/

「産業革新機構」は資本金900億円の官製ベンチャーキャピタル(VC)である。
出資元は経済産業省で、資本金900億円と多大かつまれに見るVCであり、しかも8000億円の政府保証も付く。
社長は元あおぞら銀行会長で現在一橋大学特任教授の能美公一氏、COOは米カーライル・グループMDだった朝倉陽保氏。

景気低迷でも、将来性のある産業を育てるのが狙いにある。820億円は経済産業省が出資、8000億円の政府保証も付く、まさに官製巨漢ファンドと呼べる。社長には元あおぞら銀行会長の能美公一氏、 COO(業務執行責任者)には米カーライル・グループ幹部だった朝倉陽保氏を迎えている。

経済産業省曰く、「現下の経済情勢のなか、我が国の次世代の国富を担う産業を創出するために設立、社会的ニーズに対応した成長市場において、産業や組織の枠を超えて技術等の経営資源を組み合わせ、新たな付加価値を創出する事業活動等に対して投資を行う時限的な組織である。」

設立における賛否は既に様々な記事において書かれているので割愛したい。
ただ、「ベンチャー基盤作りに国の支援が必要」と結論を出した矢先にこのような施策が実施されたことを喜ばしく思い、単なる資金だけのインキュベーションに留まらず、成長実現を現実化させる支援が出来る組織となることを期待したい。
願わくば、ドラマ「官僚たちの夏」のように、サムライ魂を持って「我々は報いを求めて働いているわけじゃない」と平然と言える人材が存在することを望む。

【関連・参考記事】
産業活力再生特別措置法改正案のポイント(経済産業省)
http://www.meti.go.jp/press/20090203001/20090203001-3.pdf

産業革新機構 インタビュー(worldcareer)
http://www.worldcareer.jp/japan

小泉政治が残したベンチャー負の遺産
改良主義的経済政策への批判
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20080725/166300/

北村彰のベンチャー一刀両断
http://business.nikkeibp.co.jp/article/pba/20090626/198641/

JapanVentureResearch
http://www.jvr.jp/index2.html