巌流島の帰り、武蔵は渦潮に飲み
込まれてしまった。

武蔵は渦潮の中の不思議な光に包
み込まれ、意識を失っていった。

どのくらいの時間が経ったのであ
ろうか?

気がついた武蔵は
「おぉ、まだ生きておるぞぉ。
しかし、ここはいったい・・・」

そう言いながら辺りを見回した。

そこは、洞窟の中であった。

武蔵は洞窟の外へと向かった。

すると外には1人の少年が立っ
ていた。

武蔵を見た少年は
「おー ビックリした。
こんな所から人が、と思ったら
何だ子供か。」

「何やつ?このわしを捕まえて
子供とは。しかも、南蛮人のよ
うな格好をしおって怪しい奴」

「どう見ても、子供じゃん。
それにしても、その格好といい
言葉遣いといい、時代錯誤な子
供だなぁ。」

「また子供扱いしおってぇ。」

「だって、ほら僕と比べても
明らかにちっちゃいじゃん。」

「確かに、南蛮人は体がでかい
と聞いておったが、こんなにも
違うのか?」

「いやいや、僕の体の大きさは
普通だし、明らかに君の体の大
きさは子供だよ。それに、さっ
きから南蛮人とか言ってるけど、
ここ日本だよ。」

「なんと!渦潮に巻き込まれて
南蛮まで流されたのかと思って
おったが、ここは日本なのか?」

「そう、ここは霊厳洞と言って
宮本武蔵が五輪の書を書いたと
されているところだよ。」

霊厳洞

「おぬし、今、なんと申した。」

「宮本武蔵が五輪の書を書いた
霊厳洞って言ったの。」

「そんなことが有る物か、わしは
こんな場所も、五輪の書とか言う
物も知らんぞ。」

「何言ってるの?宮本武蔵って大
昔の人で、君みたいな子供なわけ
ないじゃん。」

「わしは子供ではない。」

「???えぇーま、まさか。」

「ど、どうした?」

「君、自分のこと宮本武蔵って
言ったよねぇ。」

「いかにも。宮本武蔵じゃ。」

「じゃあ、佐々木小次郎と決闘と
かしちゃったの?」

「そうじゃ、小次郎との決闘の後
巌流島からの帰りに渦潮に飲み込
まれ、気がついたらここにおった
のじゃ。」

「うそぉ、まじでぇ。それが本当
だったらタイムスリップしてきた
って事?」

「ん?なんじゃ?そのタイム何と
か、とは?」

「うーん、どう説明したら良いん
だろう?とにかく武蔵は、自分の
いた時代と違う未来に飛んで来ち
ゃったってことだよ。その弾みで
体もちっちゃくなったんじゃ?」

「よくはわかんらんが、おぬしの
驚き方からすると、大変な事なん
じゃろうな。」

「大変どころか、あり得ない。
とにかく、ここでは何だから
僕のうちに来なよ。」

こうしてタイムスリップしてしまっ
た武蔵は、霊厳洞で出会った少年の
家にやっかいになることになった。


続く・・・
この物語はフィクションです。
巌流島

巌流島で佐々木小次郎との決戦を
終えた宮本武蔵は、小次郎の家来
達から逃げるように巌流島から離
れた。

数分経った頃であろうか・・・

海に突然の渦潮が。

渦潮

武蔵が乗っていたのは小さな手こ
ぎ船。

瞬く間に渦潮の中に飲み込まれて
しまった。

渦に巻き込まれながら武蔵の頭の
中にはコレまでの決闘の事が走馬
燈のように思いめぐらされてきた

「剣によってではなく、自然の力
によって死んでいくのか」

そう心でつぶやいたとき、何故か
息苦しさは無くなり、心地よい不
思議な光の中に吸い込まれていく
ような、そんな感覚に陥った。


続きはまた次回に・・・
この物語はフィクションです。