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けれども、彼の持つ同情心も侠気も、極く粗野なものである。

 心の訓練によって磨いた徳ではないのだから、人間の子供が与えられるだけのものは皆与えられ、それが衝動的に命令するがままに行動する。

 それ故、今、弱い者の肩を持って、多勢の悪太郎共を相手に竹槍合戦をする彼は、その竹槍を投げ出すと、こっそり、他所の畑へ忍び込んだり、果樹へ登ったりする。そこに何の矛盾も感じない。

 そして、今なおその味の忘られない一つの計略によって、しばしば貧乏な百姓の彼としては、異常な美味にありついた。それはこうである。

 なにしろ、その頃は狐が人間より遙に多い。それ故、どうしても畑地や田が彼等に荒らされる。春から穴に入る狐は、ちょうど収穫時頃から、暴威をたくましゅうする。

そこで、彼の村の一つの習慣として、子を育てている狐を見つけたら、その穴へ、強飯や薯の煮たのやらを持って行ってやる。その強飯や薯の煮ころばしで、狐の好意を釣出す訳なのである。
「つまり眼の縁だけ燐光を放す昨夜あらわれた怪獣と、去月十日にあらわれた全身に燐光を放す獣と、都合二匹というのだろうね……君もなかなか眼敏くなった。

僕も新聞を見た時からこいつをおかしく思ったんだ――燐光を放った獣なんか一匹いるさえ不思議だのに、二匹もいるということはどう考えてもちと腑に落ちないね……なあにやっぱり一匹だろう」


「記事からいくと二匹だがね」

「往来の人の錯覚でこの前は全身が光るように見え、昨夜は眼瞼まぶただけ光るように見え、それで驚いたに違いないよ……で僕は一匹だと思う……だがあるいは、あるいはだね、一匹もいないのかもしれないよ」レザールは微妙に云ったものである。

「全部を錯覚にするのだね?」ダンチョンは首を横に振って、「一度ならず二度までも一人ならず数人の者が、そういう獣を見たのだから、錯覚とばかりは云えないね」

「君の云うのが本当かあるいは僕の説が正しいか、探って見なければ解らないが、ただ怪獣が出たというばかりで世間の害にならないのだから、探って見ようという興味もない……依頼者でもあればともかくだが」
瑛子は、お召の膝の上にのせてしばりかけていた一つの包みを、じゃあ、これにも達夫様古下着と紙をつけてね、と云って女中に渡した。

「お嬢さんもかえって来たし、きょうはこのくらいにしとこうよ。包みは一応戸棚へでも入れておくんだね」


 開けた障子のところへ楽な姿勢で、よっかかり、その様子を眺めていた宏子の活々して、感受性の鋭さのあらわれている眼の中に、あったかい、だが極めて揶揄やゆ的な光が輝いた。

彼女は、柔かい髪をさっぱりと苅りあげている首を、スウェータアの中でわざと大きく合点、合点させながら云った。

「そう、そう。そして、十日もたったら、又同じ包みをもち出して、ひろげて、日に当てて、あっちのものをこっちへ入れて、しばって戸棚へつんでおきなさい。包みは減りっこないし、きりもないし、大変いい」

「早速そうだ!」

「だってさ」

「もう、いいったら!」