心の訓練 | 仲介手数料無料賃貸のブログ

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けれども、彼の持つ同情心も侠気も、極く粗野なものである。

 心の訓練によって磨いた徳ではないのだから、人間の子供が与えられるだけのものは皆与えられ、それが衝動的に命令するがままに行動する。

 それ故、今、弱い者の肩を持って、多勢の悪太郎共を相手に竹槍合戦をする彼は、その竹槍を投げ出すと、こっそり、他所の畑へ忍び込んだり、果樹へ登ったりする。そこに何の矛盾も感じない。

 そして、今なおその味の忘られない一つの計略によって、しばしば貧乏な百姓の彼としては、異常な美味にありついた。それはこうである。

 なにしろ、その頃は狐が人間より遙に多い。それ故、どうしても畑地や田が彼等に荒らされる。春から穴に入る狐は、ちょうど収穫時頃から、暴威をたくましゅうする。

そこで、彼の村の一つの習慣として、子を育てている狐を見つけたら、その穴へ、強飯や薯の煮たのやらを持って行ってやる。その強飯や薯の煮ころばしで、狐の好意を釣出す訳なのである。