いろいろな事があった休みも終わり、会社を往復する毎日が始まった。
S子は以前とかわった風もなく、普通に仕事をしている。会社の制服を着ているS子は地味目に映り、淫らな事を想像するのにはほど遠い。自分からS子を誘いあの夜のような事はもう二度とないだろうと思った。
電話もあれ以来、掛かって来ない。S子の気持ちもおさまり、彼氏と仲良くやっているんだろうとホッとしていた。
そんな平穏の日が続いたある昼休み、席に残り仕事をしていた自分に、S子がつかつかと歩み寄り何かを投げ付け、踵を返して去っていった。軽そうなものだったので、投げられた物を避けようしなかった。それは自分の胸に当たり、机に落ちた。小さく可愛い形に折り畳んだ手紙らしきものだった。その場であけずにYシャツの胸ポケットにしまいこんだ。
昼休みが終わり、得意先へ向かう途中、先程の手紙を開いて目を通す。すっかり忘れていたが、今度の金曜日は自分の誕生日だった。それを祝ってくれる旨の内容である。待ち合わせの場所と時間が書かれてあり、最後の一文には来るまでずっと待っているとある。あの電話での強引なS子が思い出された。
ややこしい事になった。電話で「今度にしよう」と言ったのは、確かに自分だった。これも断ると何か大事になりかねないと感じた自分は、会うだけ会ってS子の気持ちを満たして帰ろうと決めた。
約束の日、S子のペースには巻き込まれないと決意を固くし、時間通りに待ち合わせ場所に行く。S子らしき女性が立っているが、いつもの地味目の服装ではない。さらに近づいて行く。やはりそこにいたのは、紛れもなくあのS子である。ジャケットを羽織っていたが清楚な感じなブラウスが印象的で、少し短い丈のフレアースカートなどは、今までの飲み会では見たことのないS子の出で立ちだった。いつもより化粧は少し濃いめだが艶っぽく、いい匂いの香水が鼻腔をくすぐる。S子の演出に早くも巻き込まれ始めた。
カップルばかりの少し洒落た居酒屋に入り、会社の事など差し障りのない会話をしながら食事をした。今日も二人がグラスを空けるスピードは早い。何かお互いが意識的に核心から離れようと酒を飲んでいる感じがした。
ホロ酔い加減になった時、S子が紙袋を差し出した。今日、会った時から手にしていたものだ。誕生祝いだと、自分にネクタイをくれた。プレゼント如きで心は大きく揺らがなかったが、酔いも手伝ってか、いつもよりお洒落なS子が色っぽく見え始めてきた。身体の奥からあの夜と同じ衝動が湧き出てきたが、今夜は堪えなければと、気持ちを抑えた。
時計を見やると十時をまわろうとしている。帰るにはちょうどいい時間。渋るS子を促し、会計を済ます。店を出て、駅に向かって歩き始めた。
「ねぇねぇ、ホントに帰っちゃうの?」腕を引っ張り動きを制するS子。
「私、今日友達の家、泊りに行くって出てきたから、家に帰れないんだけど…」
ここまで必死に抑えてきただろうS子の本領がここから発揮される事となる。
S子は以前とかわった風もなく、普通に仕事をしている。会社の制服を着ているS子は地味目に映り、淫らな事を想像するのにはほど遠い。自分からS子を誘いあの夜のような事はもう二度とないだろうと思った。
電話もあれ以来、掛かって来ない。S子の気持ちもおさまり、彼氏と仲良くやっているんだろうとホッとしていた。
そんな平穏の日が続いたある昼休み、席に残り仕事をしていた自分に、S子がつかつかと歩み寄り何かを投げ付け、踵を返して去っていった。軽そうなものだったので、投げられた物を避けようしなかった。それは自分の胸に当たり、机に落ちた。小さく可愛い形に折り畳んだ手紙らしきものだった。その場であけずにYシャツの胸ポケットにしまいこんだ。
昼休みが終わり、得意先へ向かう途中、先程の手紙を開いて目を通す。すっかり忘れていたが、今度の金曜日は自分の誕生日だった。それを祝ってくれる旨の内容である。待ち合わせの場所と時間が書かれてあり、最後の一文には来るまでずっと待っているとある。あの電話での強引なS子が思い出された。
ややこしい事になった。電話で「今度にしよう」と言ったのは、確かに自分だった。これも断ると何か大事になりかねないと感じた自分は、会うだけ会ってS子の気持ちを満たして帰ろうと決めた。
約束の日、S子のペースには巻き込まれないと決意を固くし、時間通りに待ち合わせ場所に行く。S子らしき女性が立っているが、いつもの地味目の服装ではない。さらに近づいて行く。やはりそこにいたのは、紛れもなくあのS子である。ジャケットを羽織っていたが清楚な感じなブラウスが印象的で、少し短い丈のフレアースカートなどは、今までの飲み会では見たことのないS子の出で立ちだった。いつもより化粧は少し濃いめだが艶っぽく、いい匂いの香水が鼻腔をくすぐる。S子の演出に早くも巻き込まれ始めた。
カップルばかりの少し洒落た居酒屋に入り、会社の事など差し障りのない会話をしながら食事をした。今日も二人がグラスを空けるスピードは早い。何かお互いが意識的に核心から離れようと酒を飲んでいる感じがした。
ホロ酔い加減になった時、S子が紙袋を差し出した。今日、会った時から手にしていたものだ。誕生祝いだと、自分にネクタイをくれた。プレゼント如きで心は大きく揺らがなかったが、酔いも手伝ってか、いつもよりお洒落なS子が色っぽく見え始めてきた。身体の奥からあの夜と同じ衝動が湧き出てきたが、今夜は堪えなければと、気持ちを抑えた。
時計を見やると十時をまわろうとしている。帰るにはちょうどいい時間。渋るS子を促し、会計を済ます。店を出て、駅に向かって歩き始めた。
「ねぇねぇ、ホントに帰っちゃうの?」腕を引っ張り動きを制するS子。
「私、今日友達の家、泊りに行くって出てきたから、家に帰れないんだけど…」
ここまで必死に抑えてきただろうS子の本領がここから発揮される事となる。