職場に戻ると、数日前と同じ様な現実がそこにはあった。相変わらずS子は仕事でもマイペースぶりを発揮し、周囲をかき回している。夜になれば、まだ残暑の時季、熱気を払うかのように飲みに繰り出す。今日も飲み会にS子は来ている。


「ねぇ、里帰りどうだった?彼女と会えたの?」グラスを持って隣に座ってくるS子。本当に癇に障る女だ。


「会うに決まってんじゃん」突き放すように返す自分。


「じゃあ、エッチした?やっぱ、するよねぇ~」と、今、自分にとって最もナーバスになっている事を平然というS子。S子は帰郷している間のことは知る由もないので、人をむかつかせる天性の才能を持っている。


「久々だとやっぱり燃えたでしょ?」としつこいS子。心なしかこちらににじり寄ってきている。離れてくれよ!と心の中で思った時、S子の太股が自分の太股に触れた。それは偶然ではなく、意図的に接してきている。S子は何もいわない自分の反応を確認し、つま先でこちらの向こう脛を撫であげる。最も相手にしたくない、好きでもないS子の行動に意表をつかれ動揺する自分。


「なんだよ。やめろよ」周りの同期に気づかれないように、小声で拒絶する。自分から体を離し、距離を保とうとするがしつこいS子はまたしても近寄ってくる。


「ねぇ、彼女のこと話してよ。聞きたいの」と何を聞いてみたいのか解らぬ問いを投げかけるS子。


こちらの動揺を感じ取ったかS子は調子に乗ってくる。スカートから露出している太股を摺り寄せ、テーブルの下でS子の手はこちらの太股の上をさする。S子の挙動に、蛇ににらまれた蛙状態の自分はされるがまま。あれほど嫌悪感を抱いていたS子なのに、そのいやらしい手つきに次第に体が熱くなり、股間の中心に血が集まって行くのを感じた。周りにはいつもの同期がいて、変わらぬ風景がある、気づかれてはいけない!


「マジでやめろよ!」と同期が振り向くくらいの勢いで自分は思わず拒絶し、S子はその手の動きを止めた。



帰宅後、今夜の出来事はなかなか整理がつかずもやもやした思いが残った。あのままS子のペースの巻き込まれたならどうなったんだろう。自分は欲望を抑え切れたのだろうか?最もかかわりたくなかったS子なのに、あの瞬間、自分は紛れもなく興奮していた。もし、S子の手が股間に伸びていたら、自分の体の反応をS子に悟られていた。否定したい現実、複雑な思いが錯綜しながらも自分のペニスに再び力がみなぎってくるのを感じた。これ以上、S子には近寄ってならないと強く確信した。