同期入社のS子はルックスがよいわけでもなく、スタイルだって極普通。ただ積極的な行動の持ち主で飲み会の下ネタ話では、常に中心になっていた女の子だった。このS子をはじめ、自分の周りには同期入社の男女の仲間が数人いて、バブル採用で人が余剰気味な職場では残業もなかった為、よくつるんで飲みにいった。


S子はどちらかというといつも地味目な私服が多く、飲み会では性格が災い、うざったくなるほどでしゃばり。なぜか学生時代から付き合っている彼氏がいるとのことだが、誰もが間違いなく、酔った勢いで男女の関係になるような対象ではなかったと感じていたはずだ。


当時、自分は遠距離恋愛中で彼女とは数ヶ月に一度しか会えていない。寂しい気持ちを紛らわせる為に、ミニ同期会にはよく顔をだした。


そんなある同期会、例によって酔ったS子が下ネタ話をみなにふってきた。


「ねぇ、私は彼氏さんと適当にヤッてるけど、みんなどうしてるの?Aちゃんなんか、彼氏いないんだからどうしてるの?」


迷惑そうなA子は表情には出さないものの「私、わかんな~い。Sちゃん、何言ってるのぉ~」と煙にまく。


S子の矛先がこちらを向いた。


「ねぇ、むこうに彼女置いてきてるんでしょ?我慢できるの?遠くの一番より、近くの二番の方が良いんじゃない?」ともっともらしそうに諭してくる。


「いいじゃん別に。お前に関係ないじゃん。」


「ふ~ん、冷たいんだね。あたしが相手になってもいいって、思ってたのに!」


「えっ!」呆気にとられた表情をすると、


「冗談、冗談!冗談にきまってるじゃん!本気にした?純情~ぉ音譜」と人を小ばかにした態度。酔ってるとはいえ、心底むかつく女と思い、その瞬間から自分はS子を相手にしなかった。その後もS子の痴話は周りを巻き込んで、それなりに盛り上がっていったが、自分だけはその輪に加わわらず飲み会が散会するまで酒を飲み続けた。


やはり故郷の彼女が一番と感傷に浸り、同時に体の奥から寂しさがドッとあふれ出てきた夜だった。