そのハゲ・・・ホントの名前は雨宮惣一と言うらしい。

 

彰君のお父さんの親族の一人で小さな会社の重役だと言う。

 

『なんかね、彰君のお父さんと違って、器が小さいって言うのかなあ。しかも

 

悪いことばっかり考えてるって人みたいなの。その惣一がね』

 

既に呼び捨てだ。

 

その雨宮惣一が、彰彦の嫁になる関口家は、どうやらY県の奥地で変わった

 

仕事をしているらしい。その金をこっちに回してほしい。そう考えていたと

 

言うのだ。

 

『確かにね、その後、聞いちゃったのよ、そいつが話してるのを。相手がよく

 

顔見えなかったんだけど、Y県へ行ってみてきたがどうもよくわからない。

 

詳細を知って何としてもその会社を乗っ取れ・・みたいなこと言ってたわ。

 

どうも私たち一族が星を作る仕事をしているのを何か作る仕事をしている会社

 

みたいに思ったんでしょうね』

 

美星子がそこまで言うと

 

『だから・・・その時、僕はやっぱり優希子さんを諦めて帰った方がいいかと

 

思ったんです。お付き合いしても、もし結婚出来ても優希子さんを巻き込んで

 

しまうから』

 

そ・・・そんな。わ・・・私は!!

 

そう言いかけた時

 

『でもそう言ってられなくなったの。そいつが話してる中に優希子の名前出て

 

きたのよ。しかも、お兄さんと親しいと言うことも言ってたわ』

 

私はそれで思い当たった。だから盗聴器。

 

そうだ、それでなければホントに偶然で行き当たりばったりに、私の引き出物に

 

盗聴器なんて入れないだろう。

 

まさか全員に入れたわけじゃあるまい。

 

『だから私をもう巻き込んでるって言ったんですね、祥太郎さんは』

 

『そうです。ごめんなさい。結局あなたを巻きこんでしまう』

 

そんなこと言ったってねえ。もし全然関心のない人なら・・・だけど、あんなに

 

私が好きだった人だ。6年間忘れられなかった人だ。

 

・・・・ね、読んでよ。・・・読んでる?

 

私はうまく言い表せない、だから・・・読めるなら読んでよ。

 

美星子にまで読まれるのは、ちょっと恥ずかしいけど。私は思いのたけを全部

 

心の声で発した。どこまで伝わるか分からない。

 

あんなに好きだった人のことを、そんなことくらいで諦めたくはない。そんなこと

 

くらいって言うには余りにも大きなことかもしれないけど。

 

・・・私祥太郎さん、好きだよ。もちろん美星子のことも好き。

 

だから、そんなことで私を諦めて帰っちゃうなんて言わないで。お願い。

 

私を巻き込んでもいい。一緒に居させて。