階段を上って自販機の前に着く。

 

「あいつらの挨拶みたいなもんだもんな。さ、乗るぞ」

 

祥太郎の言葉に、陽が財布からお金を出して切符を買う。

 

時刻表を見ると次の電車まで20分ある。

 

何しろ早朝は本数が少ない。

 

「こっちはローカルだから余計だろうな」

 

仕方なく駅のはじっこにあるミルクスタンドでパンを買って、軽い朝食にする。

 

「ね、さっきお金払ったら、みて」

 

陽がレシートを見せる。

 

「しょう・・ひぜい・・?なんだそりゃ」

 

「私、細かいのも揃えて待ってたのよ。そしたら・・・」

 

「未来はそんなもの取られるの?」

 

「何か想像もつかないね、未来って」

 

未来は発見が多いな。冬子はちょっとワクワクしていた。

 

確かにいきなり未来に放りだされて怖い気持ちはあるけれど、未来って私の想像を

 

はるかに超えてる。

 

すごいな。実際私が40歳になったらこんななんだ・・・。

 

「なに、ニヤニヤしてるの?冬子」

 

「えっ・・何でも・・・」

 

冬子はいきなり言われて真っ赤になる。

 

「ま、でもいいことだよ、笑ってるのは。昨日まで泣きそうな顔ばっかりしてたもん

 

な」

 

祥太郎も茶化す。

 

「ひどい、私そんなに泣いてなんていないわよ」

 

そう言っては見たものの・・・・心細そうにしてたところは何度も見られてる。

 

ちょっと気まずい・・・でも

 

「そろそろ、電車来るわよ」

 

陽の声に救われる。助かった。

 

「これに乗れないとまた何分後になるか分からないから・・・急ごう」

 

パンの袋などをゴミ箱に捨てて、改札を通りホームへの階段を走り降りる。

 

・・・うん、そうだよね。こんなことになったから井上君ともこんなに親しくなれ

 

ちゃったんだもん。

 

昨日のあの光景を思い出して、思わず赤くなる。

 

・・・・・と、

 

「きゃっ」

 

階段を踏み外しそうになって、後ろから掴まれる。間一髪、翔だ。