「え?」

 

「俺に合わせてくれてさ。助かったよ。とんちんかんなこと言われたらどうしようか

 

って思った」

 

冬子は顔を伏せた。

 

「・・・だってなんかおかしかったんですもん」

 

「気がついたか?」

 

「・・・気がついたなんてものじゃないわ。あれ、遥奈さんがかけてたの、ポケベ

 

ル?何であんなに小さいの?折りたたみなんて売ってる??しかも、何か写真がいっ

 

ぱい貼りつけてあって、それを送ってたわ。送信しました・・って文字見えたもの。

 

さっき、写真も撮ってくれたのよ」

 

「携帯って言ってたな。それに・・・車の機械だよな」

 

冬子は頷いた。

 

「あの機械は何?高速でるのに、お金払ってなかったわよ。道まで教えてくれてた

 

し」

 

「何かおかしいよな」

 

井上君は

 

「俺、住居表示見たんだ。あ、この近くだなって思った。でも変なんだ。ホントに

 

この近くのはずなのに・・・この辺の景色に全く見覚えがないんだ」

 

確かにそばの電柱には「長尾町5丁目」と言う、二人が住んでいる地名が書かれてい

 

た。

 

「おかしいわね・・・あ・・」

 

冬子はつぶやくと、自分も鞄からポケベルを出した。

 

「誰に連絡するんだ?」

 

「・・・陽」

 

冬子の言葉に井上君は、あ・・と言う顔をした。

 

「居なくなって心配してるわよ、きっと。でも、私達が居たのがN市って知ったら

 

もっと心配しそうね」

 

陽の番号を押す。

 

「塾に行くからってポケベル買って貰ってよかった。お母さんポケベルなんて、お勤

 

めしたら自分で買いなさいって言ってたんだもん」

 

「俺だってそうだよ」

 

「えっと・・・今ここ、長尾町だよね」

 

文章を打ち込む。ほどなくすると、翔からメールが送られてきた。

 

「なんでそんなところにいるのさ」

 

細かいことは書いている時間はない。

 

こんな時はできるだけ、一緒に居なくてはいけないのだ。

 

「とにかく来て。大変なことが起こってる。早くね。来たら連絡して」

 

翔と陽に有無を言わさずこっちへ来るように書いて、冬子は電源を切った。

 

「どうしたの?」

 

井上君が不思議そうな顔をする。

 

だってもし・・・この世界がおかしいんだったら電池は有効に使わないと。

 

「そっか・・・」

 

「私の方が繋がらなければ井上君の方にメール来るわ。どちらかは使えるようにして

 

おけばいいでしょ」

 

とりあえず翔たちが来るまで・・・・・・。

 

二人はこの近くにあるはずの自分の家を探すことにした。