どさっ・・・・!!

 

人間一人が大体1mほどの高さから落ちたらどうなるんだろう?

 

・・・・・・・こうなるのだ。

 

「・・・・ってええ・・・!!」

 

最初に言葉を発して起きあがったのは翔だった。まず、一緒に倒れている陽を起こ

 

す。

 

「ここは?あ、井上君や冬子は・・・・?」

 

「大丈夫、一緒だ」

 

翔は先ず井上君を、そして次に冬子を起こした。

 

「どうしたんだ?なにが・・・」

 

井上君も起きあがると、しっかり抱きよせていた冬子の肩から手を外した。

 

「ご、ごめん」

 

「う・・ううん」

 

ちょっと見つめ合う。ドキドキドキ・・・・。

 

そこにすかさず、翔の茶々が入った。

 

「ほいほい、ラブシーンは後でね。ほんわかムードに浸ってる場合じゃないみたい

 

だよ。どうやら俺達、どうかなっちゃったみたいだぜ」

 

「どういうこと?翔」

 

「だって見てみなよ。あのパン屋、ないぜ。ここどこだよ。俺たちいつの間に動い

 

ちゃったのか?」

 

そう言われて、四方をきょろきょろと見渡す。

 

確かに、あのパン屋どころか向かいにあった郵便局もない。原っぱで草がぼうぼうと

 

生えていた通称「ちびっこ広場」は、なにやら近代的なマンションが建っていて

 

原っぱの部分はホントに少しだ。

 

「どこなの?ここ」

 

「それが分かれば苦労しないよ」

 

ともかく、倒れた時の埃をはたいて立ち上がる。

 

「そうね、おかしいわよね」

 

「冬子?」

 

「だって、確かにあの時、ものすごく暑くて私井上君にソフトクリームおごって

 

もらった・・・・でも、これどう見ても、真夏の雰囲気じゃないわ。それに時間も、

 

もう夕方って感じだし」

 

そう言えばあんなに鳴いていたセミの声がしない。しかもどことなく肌寒い。

 

冬子はぶるっと震えた。

 

「寒いだろ?これ真夏の気候じゃないもんな」

 

井上君は羽織ってたパーカーを脱ぐと、冬子の肩にかけてくれた。

 

「あ、でも、井上君・・・」

 

「俺は大丈夫。結構暑がりなの。パーカーは何となくいつも持ち歩いてるだけだか

 

ら」

 

「・・・翔は何も持ってないのね?」

 

陽は翔を冷たい目で見た。

 

「ちぇ・・・俺が暑がりなの知ってるだろう?」

 

「知らないわよ、井上君だって暑がりだって言ったわよ。見てよ、井上君の優しいこ

 

と」

 

二人が小声で言い合ってるのを井上君はさえぎり、

 

「おい、待てよ。今ここでいさかい起こしてる場合じゃないだろう?

 

まず何が起こったのか、明らかにさっきと雰囲気の違うここがどこなのか、確かめ

 

なくちゃ」

 

と、冷静に鎮めた。