「あ、来た!」

 

二人の影が見える。走ってる。そりゃそうだろう。もう20分も経ってるんだもの。

 

小さかった影が段々大きくなって、そして先を争うように二人は駆け込んでくると

 

「ごめん!遅れて!!」

 

「ごめん、時間どおりに家を出たんだけど、翔が変なもの拾っちゃってさ・・・」

 

ぜいぜい言いながらそれぞれ、翔は井上君から陽は冬子からソフトクリームを奪うと

 

一口ずつ舐めた。

 

「・・・変なもの?」

 

井上君が聞くと

 

「そ、これ・・・。何だと思う?」

 

翔は鞄に突っ込んでた、野球のボールくらいのガラス球を取り出した。

 

「なに・・・?占いに使う水晶球?」

 

「にしては小さいでしょ?」


透明のガラス球なのだが、真夏の太陽の光を受けて虹色に光っている。

 

「何色?」

 

「さあ・・・透明にも見えるけど・・・赤とかブルーにも見えるし・・・」

 

翔がその球を高く掲げてみる。

 

ガラス球だ。誰かがそれだけを落として行く、にしては奇妙な落としものだし。

 

4人でそれを見上げるとガラス球はより一層、光を浴びてキラキラ光った。

 

・・・・と、

 

「わっ!」

 

翔の手からガラス玉が滑るように揺れた。

 

「危ないっ!」

 

「翔!」

 

4人が一斉に慌ててガラス球を地面に落とさないように手を伸ばした。

 

割れちゃうっ!!

 

必死の思いが通じたのか、地面すれすれでガラス球は4人の手によって破壊を免れ

 

た。

 

「・・・ああ、びっくりさせるなよ、かけ・・・」

 

その一瞬、4人の手がガラス球に触れたその瞬間、地面が・・・・そして、空気が

 

ぐにゃりと捻じれた。

 

「・・・な、何?!」

 

手はガラス球に吸い寄せられるようにくっついて離れない。

 

「手が・・・離れない」

 

「俺もだ・・・!」

 

そしてガラス球から様々な色の光がスパークした。鋭い光が眩しい。

 

「わ・・!」

 

「きゃ・・・」

 

思わず井上君は冬子を、翔は陽を抱き寄せた。

 

うわっ・・・冬子は目の前にある井上君の胸にどきどきしたけれど、そんな思いは

 

一瞬で、冬子の意識が薄れて行った。

 

・・・井上君っ!!

 

光のトンネルをくぐるような眩しい感覚で目を開けていられない。

 

身体はくるくると回転しているような気持ち悪さだった。無重力の中に居るよう

 

な・・・。

 

必死に井上君にしがみついた。

 

ようやく、その眩しさから解放されて、ぽ~んと放り投げられるような感覚が

 

あった。