あの日、私達は時間を超えた。
時を超えたのだ。
・・・・時空を飛ぶ。そんなことが現実にあるなんて思いもしなかった。
そんなことはSFの世界の出来事でしかないと思っていた。
4人で見た夢かとも思った、でも。
4人とも夢を見たなんてしかも同じ夢なんてあり得ないし、あんなに鮮明な夢なんて
もっとあり得ない。
やはり私達が時を越えたとしか表現できないだろう。
それが・・・4人以外の誰も知りえなくても・・・。
25年前・・・冬子も祥太郎もそして陽や翔君も、実家のあるS県の長尾第三中学の
三年生だった。
陽と翔はそれこそまだ二人とも母親のお腹に宿らないうちからの、付きあいだった
らしい。
陽の両親と、翔の両親は偶然、ある新興住宅地の売り出し中の一軒家を購入した。
新婚当時のことだ。
偶然、お隣にも新婚の夫婦が居る・・・と言うことで、二軒は急速に親しくなった。
毎日のようにおしゃべりし、買いものに出かけ、そしてやがて同じような頃に子供を
授かった。
「もし、男の子と女の子だったら、結婚させたいね」
そんな若い母親の無謀とも思える希望を、神様が聞きいれてくれたのかどうか
見事に佐々木家には女の子が、高橋家には男の子が生まれた。
そして、産院にいるころから二人は毎日のように顔を見せあい、大きくなった。
当然幼稚園も小学校も一緒。
さすがに中学に入ると一緒に遊ぶことはなくなったが、何となく特別な存在として
意識していた。と言っても恋人同士という感覚のわけではない。
そう、まるで兄弟のような、居ないとものさびしい関係。
両家の母親の「すりこみ」は成功したと言えるだろう。
でも生まれた頃からの幼馴染、しかも隣に住んでいると言うことはクラスメイトの
恰好のからかい種になる。
毎日のように「二人はカップル」とはやし立てられて、真っ赤になって否定していた
ものの、三年生になる頃にはもうからかうものもいなくなった。
そのくらい二人の関係は自然だったのだ。
そして何となくお互いを意識するようにまでなっていた。