新婚当時は、もちろんまだまだ熱々だったはずだ。だって、初恋が実ったんだもの。

 

朝、目が覚めるたびに隣のベッドに祥太郎が寝ていることが、夢ではないようにと

 

祈ったものだ。

 

それが遥奈が生まれて仕事が忙しくなって・・・・人の気持ちって変わっていくもの

 

なのね・・・

 

冬子は自問自答して、ふと、いや・・・私今でも祥太郎のことが好きなはず。

 

好きよ。なのに・・・。考え込んでしまった。

 

「・・・・子?冬子?」

 

陽が目の前で手のひらをひらひらさせている。

 

「ああ、陽」

 

「大丈夫?」

 

「うん。じゃあ、翔君と祥太郎が帰ってきたら・・・」

 

「そうね、うちに来る?これから遥奈ちゃんや光君の分も夕食作っておくから。

 

冬子は押入れの整理あるでしょ?」

 

・・・そうだった。

 

「うん、じゃ、よろしく。私一旦帰るわ」

 

冬子はノートをおいて、高橋家を後にした。

 

あのままにしておいたらいけない。出しっぱなしだもの。

 

それにしても陽ったら・・・・。あれを聞いた祥太郎の顔を見たかった。

 

さぞやびっくりしたでしょうね。

 

冬子はくすっと笑うと、ちょっと弾んだ気持ちでまた和室に戻った。

 

 

結局、押入れはまた出したものを元に戻しておしまい・・・と言うことになって

 

しまった。

 

布団?和室に置いておけばいいのよね。何日かのことだもの。

 

だってもう到底整理しようなんて気持ち沸かないよ。

 

あんなもの見つけちゃったんだもん。あの時の記録。忘れないようにってあの時

 

私が徹夜して書きとめたあの時の出来事・・・。

 

きっと、あの時の記憶がこのノート見つけるように仕向けたのかもしれない。

 

そう、25年後に併せて私が思い出すように・・・・

 

25年前。若かったよね・・・今でも目をつぶればあの頃の楽しかった15歳の私

 

が・・・・祥太郎が、陽が翔が居る。

 

冬子は懐かしさに胸を膨らませて目を閉じた。