「おかしいわね。いつもどおりにお店を出たって・・・・そしたらとっくに帰ってる

 

はずなんだけど」

 

「今、あるとたちが呼びかけたけど、返事なかったって、まあ、返事ないのはいつも

 

のことだけど・・・」

 

「やっぱり何かあったのかしら」

 

「えりさに続いてか?」

 

「でも、こんなに遅くなるなんて。連絡もなしに」

 

パパは、どこかに寄ってくることはまずない、必ず仕事の後はまっすぐ帰るのだ。

 

パチンコは仕事のない日に行ってたんだし、ママに怒られて以来、パチンコに行く

 

こともなくなった。

 

まあ、あのあと、めちゃくちゃ負けたってこともあるんだろうけど。

 

たとえコンビニやスーパーにもし寄ったとしても、こんなに遅くなることはあり得

 

ない。

 

「探しに行くか。世話の焼ける親父だけどさ」

 

かなとが立ち上がる。その時、玄関でがたっと音がした。

 

「・・・誰か・・・?」

 

ママが青ざめる。かなととあるとがさっと立ちあがって、リビングの戸口に立った。

 

「大丈夫だ、俺たちが見て来る。ママたちはここにいて」

 

そろそろと玄関に向かう。

 

「待って!」

 

えりさが叫んだ。

 

「えりさ?」

 

「パパだよ、パパがいる」

 

え?私たちもドキリとして、意識を集中する。

 

「ほんとだ」

 

あるとが言った。

 

「パパの意識が聞こえる」

 

うん、確かに聞こえる。私たち、物音と今までのえりさからの一連の事件に過剰に

 

反応して、本来の私たちの能力を使ってなかった。

 

気をつけてみれば、かすかだけどパパの意識が断片的だけど伝わってきた。

 

それでも、用心するに越したことはない、あるととかなとは用心深く、のぞき窓から

 

外を見て、そしてドアを開けた。

 

「パパ!」

 

パパが、ドアにもたれるように倒れている。誰かにやられたんだろうか。

 

こんなときだ、暗がりに何か潜んでいても困る。

 

かなとがパパを引きずって中に入れ、あるとがきっちりと鍵をかけた。