初日3時間の日程を終えて、半ば頭の中に鳩が飛びそうな状態になってるところに
『おい、ありす、今校門前に着いたぞ』
とかなとの声が響いた。
カバンを持って立ち上がる。久しぶりの学校は疲れた・・・・って、休んだのは
たった1週間なんだけどね。
またも校門前は人だかりが出来ていた。
やれやれ。パパもママも当分二人についてって貰えというけど、毎日朝と夕方とこれ
じゃあなあ・・・。
とは言え、実のところを言えば私も怖い。これが通り魔的なものだとすれば、また
狙われることもないとは言えないのだ。
仕方ないか・・・・思わず口を付いて出た言葉にあるとが怪訝そうな顔をしたが、
私は笑顔で否定した。
早く治ればいいんだ、って怪我より心の方がだけど。試験も5日間の日程だけど、
初日が終わった。あとは4日間。
「帰りましょ、お兄様」
私は敢えて、「お兄様」というところに力を入れて二人の手を取った。
帰りは行き程足が震えなくなった。どうやらあの駅のあの階段に対してだけで、済ん
だらしい。ほかの場所は大丈夫ということか。
「あ、ねえ」
私はあるとの袖口を引っ張った。
ん?という顔をしてあるとが私を見た。
「あの子・・・・じゃない?」
道路挟んで反対側の歩道に居る子、遠いけれど吸血鬼の視力を舐めちゃいけない、
ただ・・・一度で人をきちんと覚えられてるかというのは疑問だけど。
「・・・多分、そうだと思う」
「何がだ?」
「今朝の子よ」
「そか??って俺たちは殆どその子の顔を見てないからなあ・・・・でもありすが
そう言うんだったら間違いないだろう」
100%って言われると自信はない。でも、99%ならある。
「一度ならずも二度、しかも同じ日に・・・何かあるんだろうか」
「問い詰めてくるか?」
帰りもカバンを持ってくれたかなとが、あるとにカバンを渡そうとする。
「待って、根拠もないのに問い詰められないわよ。二度もあったけど、二度しか
あってないんだもん」
あるとも頷く。
「同感だな、これは慌てない方がいい。ちょっと調べてからにしようぜ」
「調べるって?」
「まあ・・・・それは帰ってからにしよう」
あるとが軽く私の肩を抱いた。