病院の入り口にはあるとと看護師が2人、立っていた。

 

昼間、と言うより朝だから救急車は大きな入り口の前に着いた。担架で運ばれると

 

病院とは言え視線が痛い。しかも金髪の長身のかなとがいるのだ。

 

もちろん、看護師と一緒に同じく長身で金髪のあるとが居る。

 

ただでさえ救急車で人目を引くのに、この二人のおかげで更に人目を引いてしまう。

 

でも居てくれて助かったのは事実だ。

 

救急隊から私の名前や年齢、血圧や脈拍などが伝えられ、救急車が引き上げると同時

 

に今度は私は看護師の手に依って院内へと運ばれた。

 

あると・・・・声を出そうとしても声が出ない。でも

 

『大丈夫だ、既にここの医師と看護師には催眠術を掛けた。脈拍のことも多分救急

 

隊員の書き間違いで処理するだろうよ』

 

あるとが頭の中に話しかけてきた。

 

「痛むか・・・・?」

 

今度は声に出して。

 

「かなと、悪いがママに・・・・」

 

「ああ」

 

かなとは診察室の手前で方向を替えると、入り口の方へ戻りだした。手には携帯が

 

握られている。

 

テレパシーで交信は出来るけど敢えて携帯を使う。

 

パパやえりさに聞こえてしまうからだ。それにママがビックリするのも電話の方が

 

抑えられるからだ。

 

ママ、心配かけてごめん・・・・。

 

「気にするな」

 

あるとが優しく声をかけてくれた。

 

「では・・・お兄様はこちらでお待ちくださいね」

 

看護師に言われてあるとは診察室前の椅子に座った。

 

診察室の中ではレントゲンを撮ったり、MRIを撮ったりした。あるとが前もって

 

催眠術を掛けておいてくれたので、医師からもびっくりするほど低い脈拍と血圧にも

 

何も言われずに済んだ。それで無ければ怪我の前に極度の低血圧と低い脈拍数で、

 

再検査だっただろう。

 

痛み止めの注射を打って貰うとようやく痛みが引いて行った。

 

1時間ほどの検査と手当のあと、私は病室に運ばれ、あるとも呼ばれた。