「ねえ」

 

「ん?」

 

「私たち、もしヴァンパイヤと人間のハーフじゃなかったら・・・どうなってたんだ

 

ろうね」

 

そう、もし私たちが普通の人間だったら・・・私たちはどうなってたんだろう。

 

「さあな・・・パパとママが出会って俺たちが生まれたんだから・・・出会わなか

 

ったら、生まれなかったかもしれないな」

 

「そっか、それもいやだな」

 

あるとがもう一度頭を撫でて

 

「今こうして俺たちがハーフなことはもう変えられないんだから、受け入れるしか

 

ないんだよ」

 

ん・・・・そうだね。こればかりは私たちがどうあがいても変えられることのできな

 

い事実だ。

 

「ねえ・・・・」

 

「ん?」

 

「私たち、恋人同士みたいに見られてるよ」

 

隅の方で、『カップルかな』『カッコいいけど彼女がいるみたい』なんて声が聞こえ

 

てくるのだ。

 

彼女たちは囁いてるつもりでも私たちは耳が常人よりいいんだもん。

 

髪の色も違うし、一見してあまり似てる私たちじゃないしそうみられるのかも

 

しれない。

 

「ふん、こんなガキ、彼女に見られちゃ迷惑だね」

 

あるとが軽口をたたく。

 

「ひどいな、私だってこんな彼氏嫌だよ」

 

あるとを叩くふりして笑うと、またあちこちでささやく声が聞こえた。

 

やれやれ・・・・こんなヤツのどこがいいんだろう。日本人は容姿から入るからな。

 

 

 

みつ豆を食べて、本屋やCDショップを歩いて、そこでもあるとは注目の的だっ

 

た・・・・二人で家に戻る。

 

「お帰り、あら、一緒だったの?」

 

ママがりうを連れて玄関までお出迎え。

 

「うん、駅で会ったんだ」

 

とごまかして

 

「かなとは?」

 

見た限り居そうにない。

 

「まだよ」

 

・・・やっぱり。早く帰るって言いながらまさかまだ一緒なのかしら・・・

 

私はあるとと顔を見合わせた。

 

「ありす、ご飯の支度手伝ってくれる?」

 

後ろ髪を引かれる思い、というのはオーバーだけど・・・で、「はい」と

 

返事してキッチンに入る。

 

・・・後は任せた!そんな意味であるとを指差すと、あるとが情けなさそうな顔を

 

したが、

 

「よろしくね、お兄ちゃん」

 

もう一度キッチンから顔をのぞかせて、ウインクすると、「ばか!」と笑った。