「ダメか・・・・・」

 

孝宏が手を離す。

 

「ううん、色々試してみましょう」

 

菜桜が提案した。

 

「色々って・・・・」

 

「いまは私に美桜が触れて、真宏、孝宏と続いたでしょう?」

 

「よし、じゃあ、今度は俺が先に・・・・・」

 

菜桜の手に真宏が触れ、そして美桜、孝宏と続く。

 

「ダメだわ・・・・・」

 

「でも、いま菜桜と真宏では光らなかったよね・・・・ってことは、この組み

 

合わせだと光らないのね。次、やってみましょう」

 

結局4人は順番を替えては色々試してみたけれども、どれも変わらなかった。

 

「・・・・ダメってことか」

 

「もう一つあるわ」

 

「菜桜?」

 

「4人、一緒に触れてない。・・・・やってみましょう」

 

4人で向かい合い、右手を差し出す。菜桜が頷き、4人で一斉に手を合わせた。

 

「う・・・わっ!!」

 

「きゃっ・・・・・!!」

 

今まで見たことないような大きなスパークのあと、4人の手を合わせた周辺が

 

キラキラと輝いていた。

 

「・・・・これだわ!ほら見て!奥の方光ってるでしょ」

 

あの時、私が孝宏を追って通った光の道のようなもの・・・・・黄色と言うか

 

たまごイエローって言うのか・・・・その中を上になったり下になったりして

 

向こうの世界に行ったんだよね。

 

あの時の入り口の色だ、これ。

 

「これよ・・・!私と真宏が入ったわっか・・・・・!」

 

美桜が興奮して叫んだ。

 

「てことは、これをくぐれば・・・・・」

 

真宏が身を乗り出した。

 

「待って!!」

 

真宏を制したのは美桜だった。

 

「・・・・美桜??なんで・・・?帰れるんだぜ、俺たちこれで」

 

困惑した表情で真宏が美桜を見た。

 

「帰りたいわ。今すぐにでも」

 

美桜は言った。

 

「でも、これで帰れる道がわかったわけでしょ、それだったら私、ちゃんと

 

みんなにお礼を言って帰りたい。

 

杏子さんや緑久保先生、それから菜桜のお母さん、孝宏のお母さん、尚人

 

さん・・・」

 

尚人は今日は用事があって出掛けていたのだ。

 

「もう二度と会えないかもしれないのよ、お礼言うなら・・・今しかない」

 

「そ・・・か、そうだよな。俺、嬉しくってすっかり忘れてた。俺だって、俺を

 

拾って世話してくれた孝宏のお母さんや、尚人兄さんにお礼を言いたい。

 

美桜をずっと世話してくれた菜桜のお母さんにも、緑久保先生にも・・・・。

 

そうだな、黙って言っちゃ申し訳ない。これで道がわかったんだ、みんなに

 

お別れを言ってからにしよう」

 

「ママを呼んでくるわ」

 

菜桜が立ち上がり、孝宏も

 

「おふくろ、起こしてくる。あと、兄貴にLINE入れてくる」

 

「わかった、私は杏子も呼ぶわ、あと・・・緑久保も来れないか聞いてみる」

 

「菜桜・・・・孝宏・・・・」

 

まさかこんなに急に別れが来るとは思わなかった。

 

でも、帰れるってわかったら早い方がいい。

 

菜桜が部屋を出て行き、孝宏も後を追った。

 

「まさ・・・・あ、二人なら孝宏でいいのか・・・」

 

美桜が舌を出した。

 

「私、ここへ来たこと・・・この世界に来ちゃったこと、後悔してない」

 

「俺もだ・・・・・」

 

「ちょっと、寂しいね」

 

「・・・ああ」

 

「二度と会えないのかな・・・・」

 

「多分な・・・・・」

 

美桜は真宏の肩にそっと頭をもたれさせた。