「こんな時間だもの、もう外を歩いてないで、どこかで身を潜めてるかも

 

しれないわ」

 

確かに若い女の子がフラフラと夜歩いているのは好ましくはない。

 

杏子の言う通りどこか身を潜めているのでは、という推測は正しいかも

 

しれない。

 

でも、だったらホント食事はどうしているんだろう。

 

真宏を見つけた時でさえ、真宏は4日ぶりと言った。あれからまた一晩

 

明けている。どこかで食べる物を見つけて居ればいいけれども・・・・・。

 

見つかる前に命を落とす羽目になってしまったら、知り合いも居ない、

 

おなかも空いた、身を寄せるところもない、高校生の身にとっては想像を

 

絶する怖さだと思う。

 

「ともかく美桜のことはものすごく心配だけども・・・・遅いし、とりあえず

 

杏子ちゃんを送ってそれから家に戻ろう」

 

尚人の言葉に全員が頷いた。

 

「明日はまた、お昼頃学校まで迎えに来る。今日は菜桜と真宏はともかく、

杏子ちゃんと孝宏は制服だった、明日は私服を乗せてくるよ。

用意して置いて・・・あ、杏子ちゃんは持ってこなきゃだけども・・・・」

「大丈夫、そのくらい。明日も授業はないしね」

 

杏子は言った。

 

杏子を送る。杏子は車を降りると

 

「ありがとう」

 

と言い、おにぎりの入った袋を持ちあげた。

 

「また明日」

 

「うん」

 

自分の家へと歩きだした杏子だったが、ふと振り返ると

 

「ねえ・・・向こうの世界の・・・・・ううん、美桜は一度も菜桜の家に来な

 

かったのかしら」

 

そう言えば真宏は、自分の家と何か違うと不審に思いながらも、一度孝宏の家を

 

訪れている。そこで運悪く?いや運よく・・・・孝宏のお母さんにつかまった

 

わけだけども。

 

「そっか・・・・僕も向こうの世界に行ってしまったとき、半信半疑で真宏の

 

家まで行った、きっと美桜も確かめに来ているんじゃないかな。結局会わない

 

けども」

 

「一軒家じゃないからねえ、隠れるところもないし、様子を窺うのは入り口の

 

扉しかないんだよねえ」

 

となれば、そこに来ている可能性は低い訳だけども。

 

「ともかくじゃあ・・・明日」

 

杏子は手を振り、家の中へ入って行った。

 

尚人はエンジンをかけ、今度はまっすぐ家に向かった。